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秘密保持契約(NDA)を徹底解説2 ~秘密保持義務とその他の義務~

2022.12.16

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今回は、秘密保持契約(NDA)についての第2回目です。 前回の「秘密情報の定義とリスク」はコチラをクリック
 

秘密保持義務とその例外

  秘密保持契約(NDA)においては、まず、どのような情報を保護するか、つまり、守秘の対象となる「秘密情報」の範囲を定める条文があった後に、秘密保持の義務を定める条文が来るのが通常です。   具体的には、「受領当事者は、開示当事者の事前の書面による承諾を得ることなく、秘密情報を、第三者に開示または漏洩してはならない。」というような内容が定められます。   これは、秘密保持契約(NDA)の中核となる義務を定める条文となります。   ただ、この秘密保持の義務を定める文言について、法務レビューで問題となる例は少なく、むしろ、次に記載する、どの範囲なら開示してもよいか、という開示の範囲などの方が、修正の対象となることが多いです。        

開示の範囲(守秘義務の例外)

  秘密保持契約(NDA)では、秘密保持の義務を定める条文と同じ条文か、又は別の条文で、どの範囲でその情報を開示してよいかという開示の範囲を定めている場合が多いです。   具体的には、「受領当事者は、本件目的のために必要な範囲においてのみ、受領当事者の役職員、及び、受領当事者が依頼する弁護士、公認会計士、税理士その他のアドバイザー(ただし、法律上または契約上秘密保持義務を負うものに限る。)に対して、秘密情報を開示できる。」というような条項となります。   この条項のレビューで留意すべきなのは、まず、グループ会社の場合など、親会社や子会社と情報を共有する必要があるような取引もありますので、開示対象に、自社の関連会社及びその役職員を含むというような追記を行うかどうかです。   具体的には、共同研究開発目的に際して、子会社等と共同して行うのであれば、情報の共有も必要になるかもしれません。また、親会社に対して報告義務を負う場合に、親会社に対して情報を開示しなければならないという場合もあり得るかと思います。   更には、関連会社だけではなく、融資を受ける場合など、銀行などに開示する必要が生じる場合もあります。その場合には、そういった例外的開示があり得る旨を入れておく必要があります。    

秘密保持の例外

  次は、秘密保持の対象から除外される例外についてです。前回のコラムで記載した通り、秘密保持契約(NDA)においては、詳細に「秘密情報」の定義が定められ、その定義に該当する情報について、情報の受領者は、秘密保持の義務を負うこととなります。   しかしながら、秘密情報であっても、受領した側がやむを得ず開示を迫られた場合にまで秘密保持契約違反とするのは酷ですので、秘密保持の例外とするという規定が定められるのが一般です。 具体的には、「受領当事者は、法令、監督官庁等の処分、命令、または、裁判所の決定、判決等により秘密情報の開示を命じられた場合、当該命令の範囲内で秘密情報を開示することができる。」というような規定となります。   この条文をレビューする際の留意点としては、行政から正式な命令が出たり、裁判所からの決定が出たというような明確な例であれば問題ないのですが、監督官庁から要請され、事実上断ることは出来ないような場合には、上記のような文言では例外に該当しないことになります。   そのため、情報の受領側であれば、監督官庁の行政指導や要請に基づく場合なども、例外の対象として含めることも考えられます。   また、別の留意点としては、情報を開示する側としては、法令や裁判所の決定に基づく開示であったとしても、事前にどのような情報がどのように開示されるのかを把握できる方が望ましいですので、開示前に、その旨を開示当事者に通知しなければならないという文言を追記することもあり得ます。   なお、強制的な開示であったとしても、開示当事者の事前同意が必要と定める契約例もないわけではないですが、その場合、受領当事者は、事前同意が得られず、かといって、法律上必要な開示はしなければならないという困った立場に追い込まれます。そのような場合には、開示当事者が、不当に事前同意を留保しない旨も定めておいた方が合理的です。          

目的外使用の禁止

  目的外使用の禁止の定めがない場合、受領当事者は、開示当事者から受領した秘密情報について、第三者に開示はできないものの、本来意図された目的(取引関係開始の検討など)以外の目的においても、原則使用できてしまうということになります。 そのような事態を避けるため、目的外使用について禁止する条項を入れるのが一般的です。   開示当事者としては、できるだけ詳細に限定的に目的を記載した方が、受領当事者による秘密情報の想定外の利用を防げるということになります。   しかしながら、取引関係が深まり、より広い範囲で当該情報を利用することがあり得る場合もあります。そのような場合にまで、秘密保持契約違反としてしまうのも望ましくありません。 そのため、現在意図されている取引に加え、関連取引の締結もあり得る場合には、目的の中で、「その関連取引も含む」というように記載する場合もあります。        

秘密情報の返還、破棄

  開示当事者として、自社の秘密情報の漏えいのリスクをできるだけ減らすためには、秘密保持契約(NDA)を締結して、秘密情報を開示した場合には、開示の目的が達成されたか、不達成となることが確定した場合や、相手方における検討に、当該情報が不要となった時点などにおいて、秘密情報を返還してもらったり、破棄してもらうことが有用であるため、秘密保持契約(NDA)には、秘密情報の返還や破棄についての条文が入っていることが通常です。   具体的には、「受領当事者は、開示当事者からの要請があった場合、受領当事者及び受領当事者から本契約に基づいて開示を受けた第三者が保有する秘密情報を、速やかに返還または破棄する。なお、秘密情報を含む二次的資料も同様とする。」というような規定です。   返還や破棄のタイミングについては、契約書によって違いがあり、「本契約終了時」とするような例もあれば、「開示当事者から要請があった場合にはいつでも」ということで、開示当事者の裁量でいつでも返還や破棄が求められるとする例もあります。   開示当事者としては、自らの判断でいつでも返還や破棄が要請できる方が有利です。破棄か返却のどちらがいいかは、状況次第であり、一概には論じられないのですが、紙の書面で交付された場合などは、破棄を求めることも多いようです。渡した書類そのものを返してくれということになります。     一方、電子データ等の場合には、返還といっても難しいため、破棄を定めることになろうかと思います。   いずれの場合でも、受領したすべての秘密情報を返還又は破棄したことについて、証明書の交付を求める契約書も多くあります。 開示当事者としては安全ですが、受領側としては、消し忘れがないことを確認の上、正式な書面を出すこととなりますので、可能であれば削除した方が良い規定ではあります。        

情報の取り扱いや管理

  更に、情報の取り扱いや管理について定める契約書もあります。   具体的には、 「1.受領当事者は、本契約に基づき受領した秘密情報について、施錠できる保管場所において厳重に保管するものとする。 2.受領当事者は、本契約に基づき受領した秘密情報の管理者を定め、当該管理者の氏名、役職及び連絡先を開示当事者に通知することとする。」 というような具体的な取扱いの手順を定めるものが多いです。   さらには、受領当事者の善管注意義務や、漏えいの恐れがあった場合の通知義務などを定めるものもあります。   適切な管理をしてもらえれば、当然、漏えいのリスクは下がりますので、非常に重要な情報を開示する側の当事者であれば、こういった規定を詳細に入れていく方が良いでしょう。    

秘密保持義務をめぐるトラブル

  秘密保持契約(NDA)は様々な取引に先立って結ばれることも多く、多くの企業で年間の締結権限が非常に多い契約書類型ではあります。そのため、ざっと確認して簡単に締結しがちなところもあるのですが、それなりにトラブルになることはあり得ます。   具体的には、同業他社に新製品に関する情報が漏えいされた場合、信用情報が漏えいされた場合などです。     一方、漏洩によって生じた損害の賠償は、かなりハードルが高く、なかなか認められません(なお、秘密を漏洩された場合の損害賠償請求については次回のコラムで紹介させていただく予定です。)。   そのため、やはり、情報を開示する側としては、できる限り、漏えいを防ぐための方策を入れ込むように、秘密保持契約(NDA)を修正をすべきということになります。その観点から、今回のコラムで説明させていただいた目的外使用の禁止の定め方や、秘密情報の管理について詳細な規定を置くといった方策は、とても重要な手段となります

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