法務サポートコラム

民法改正・定型約款に関する規定の新設

2020年01月24日配信

今回は、2020年4月の民法改正において新たに設定される、「定型約款」についてご説明します。
 
現在の社会においては、不特定多数の顧客を相手方として取引を行う事業者は、大量の取引を迅速かつ安定的に行うために、あらかじめ詳細な契約条項を「約款」として定めておき、この約款に基づいて契約を締結することが少なくありません。
例えば、インターネットでの取引、バスや鉄道の乗車契約、宅配便による運送契約、保険契約などは、多くの場合、約款に基づいて取引が行われています。
 
このような約款を用いた取引において、顧客は約款の詳細を確認・把握しないまま契約をすることがほとんどだと思います。鉄道会社においてどのような約款を定めているか、なんて意識しないまま、電車に乗っていますよね。
今までの民法では約款を用いた取引についての基本的なルールが何ら定められていませんでした。
そのため、今回の改正においては、「定型約款」という概念を新たに設定し、そのルールを新たに定めています。
 
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1.何が「定型約款」に当たるか

 
改正民法は、「定型取引」のために準備された条項の総体を「定型約款」としています。
では、何が「定型取引」となるのでしょうか。
 
①ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、
②その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの
です。
なんだか複雑ですが、世間で広く「約款」と呼ばれているもの、その全てが改正民法における「定型約款」に当たるということではなく、「定型取引」のために準備された約款でなければならないのです。

 
そのため、一般的に、企業間取引において用いられている約款で、相手方の個性に着目するものは該当しませんし、交渉力の格差により、画一的に処理されてきたものは、双方にとって画一的処理が合理的とは言えないため該当しません。
 
この「定型取引」のために準備された約款(「定型約款」)についてのみ、今回新設された制度が適用されることになります。
 
 

2.みなし合意の規定

 

「定型約款」の場合、どのような効果が生じるのでしょうか。
 
そもそも、民法上、個別の条項について両方の合意がなければ拘束力が生じないというのが原則でした。そのため、各種取引において、約款が作成されていても、実際に紛争が生じた際に、相手方から、そんな約款には合意していないとして、その効力が争われる事例が多く見受けられました。(但し、現実の社会で約款は多用されており、裁判例上、合意の意志が推定されるという約款法理が認められている状況でした)
そのため、「定型約款」については、当事者間において、個別の条項についての合意がなくても、これに合意したものとみなすというのが、今回新設されたみなし合意の規定となります。
 
では、どのような場合にみなし合意があるとされるのでしょうか。
まず、定型取引を行うことの合意が必要です。これは、内容の詳細を把握していなくてもよく、例えば、インターネットで物品を購入する場合、どのようなお店でどのような商品をいくらで購入する程度の合意でOKです。
 
次に、①当事者間で定型約款を契約の内容とする旨の合意をするか、②定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方(顧客)に表示しておくことが必要です。
①か②が満たされると、定型約款に記載された個別の条項の内容について相手方(顧客)が知らなくても、個別の条項について合意したものとみなされます。
 
ただし、例外も定められており、信義則に反して相手方(顧客)の権利を制限し、又は相手方(顧客)の義務を加重する条項であって、信義則に反して相手方(顧客)の利益を一方的に害すると認められる条項については合意をしなかったものとされ、契約内容になりません。表現が分かりにくいですが、簡単に言い直すと、社会通念に照らして、相手方に一方的に不利なものはダメということになります。
細かい話ですが、相手方が消費者の約款の場合には、消費者契約法も適用され、同法10条には、消費者の利益を一方的に害する規定は無効とされていますので、消費者が相手方の場合には、消費者契約法に基づいて約款を無効とすることも可能となる場合があります。

 

 

3.定型約款の変更の要件

 

定型約款を用いて締結された契約は長期間継続することも多いですが、長期にわたって継続する取引では、法令の変更や経済情勢・経営環境の変化に対応して定型約款の内容を事後的に一方的に変更する必要が生じることも少なくありません。そのため、約款を準備した側が、一方的に変更することもできるとされていますが、変更には以下のような制約が規定されています。
 
(1)内容面での制約
まず、①その変更が相手方(顧客)の一般の利益に適合する場合はOKとされています。具体的には、相手方からの解約の事前予告期間を短縮するような場合ですね。
次に、②変更が契約の目的に反せず、かつ、変更にかかる事情に照らして合理的なものである場合です。
 
(2)手続き面での制約
なお、約款には「当社の都合により条項を変更することがあります」との条項が設けられることがありますが、そのような条項があるというだけで、一方的な変更が許されるというものではなく、変更に際しては、その効力発生時期を定め、かつ、①定型約款を変更すること、②変更後の定款約款の内容、③効力発生時期、をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならないとされ、特に、(1)の➁の場合(変更が相手方の利益になる場合ではなく、事情に照らして合理的な場合)には、周知しなければ効力が発生しないとされています。
 

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