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売買契約

売買契約の契約書レビューで気をつけるべきポイント

2020.09.30

契約書の書き方

CHECK POINT

売買契約においては、一般的に、目的物に不具合があってもめるというのが、もめごとの類型としてはかなり多いですので、売買契約を確認する際には「契約不適合責任」をチェックすることが、特に重要なポイントです

売買契約におけるレビューのポイント

このページでは、契約書レビューにおいて頻出する契約類型「売買契約」について、チェックするべき点を解説していきます。

「基本契約」とは何ですか?

基本契約(取引基本契約)とは、法律上定義が定められているわけではありませんが、一般的に、同一当事者間で反復継続して行われる取引につき共通して適用される事項をまとめて規定した契約のことをいいます。同じような内容の取引が繰り返し行われる場合、主要な条件について基本契約で一括して定めて固定化しておくことで当事者間の契約関係を安定させることができること、取引のたびに契約条件を細かく確認しなければならないという手間を省くことができること等が基本契約を締結するメリットになります。

継続的な売買契約や代理店契約、業務委託契約、派遣契約等でよく利用されます。

例えば、継続的な売買契約の場合、基本契約において、全ての個別の取引に適用される事項として、商品の発注方法、代金の支払方法、商品に瑕疵があった場合の処理の方法、契約の解除条件等を定めておき、個別の取引ごとに、対象となる商品、数量、単価や納期等、内容に変動のあるものだけを合意する(この個別の合意を「個別契約」といいます。)という方法をとることになります。一般的に、個別契約においては、別途契約書の形で合意するのではなくて、発注書と受注書のやり取りで合意する場合が多いです。

なお、このように、基本契約と個別契約の2種類の契約を利用して取引関係を定める場合、基本契約と個別契約との間で齟齬があった場合の優先関係を定めておくことや、個別契約で定める内容を基本契約の中で明記しておく等、両契約の役割分担を明確にしておくことが大切です。

「瑕疵担保責任」とは何ですか?

瑕疵担保責任とは、「売買の目的物」に「隠れた瑕疵」があった場合に、その過失の有無を問わず売主が負う法定責任のことをいい、改正前民法570条に規定されていました(ただし、改正後民法では削除されています。)。

買主は、同条に基づき、売買の目的物に隠れた瑕疵があれば、売主に対して損害賠償請求をすることができ、あるいは、瑕疵が存在するために契約の内容を達成することができなかった場合には売買契約を催告なく解除することができるとされていました。

この「瑕疵」や「隠れた」の意味が明確ではないため、その解釈が問題となっていましたが、通説上「瑕疵」とは個々の契約の趣旨に照らせば目的物が有すべき品質・性能を欠いていること、「隠れた」とは当該瑕疵の存在につき買主が善意無過失(過失なく知らないこと)であったこととされていました。

また、瑕疵担保責任が生じる「売買の目的物」は何かという問題に関連して瑕疵担保責任の法的性質も問題になっており、特定物(土地とか中古の車、中古のピアノなど、特定の物を意味します。一方不特定物は、新品の車など、この目の前の物ではなく、一定のカテゴリーに入る物を意味します。)の売買契約において、瑕疵のある特定物を引き渡しても「この物」(特定物)を引き渡したのであれば、それは完全な履行であるといえるため、買主は売主に対して債務不履行に基づく責任を追及できないという考え方を基礎として、瑕疵担保責任は、債務不履行責任とは別に法が特に定めた責任であるとする『法定責任説(瑕疵担保責任の対象となる「売買の目的物」は特定物のみ)』と、売主は瑕疵のない目的物を引き渡す義務を負っており目的物に瑕疵がある場合には債務不履行責任が生じるところ、瑕疵担保責任は売買における債務不履行の特則であると考える『債務不履行責任説(瑕疵担保責任の対象となる「売買の目的物」は特定物、不特定物を問わない)』が対立していました。

この法定責任説と債務不履行説は、売主の損害賠償義務の範囲等の結論にも差が生じていたところですが、判例も法定責任説を採用していると考えられつつ、その立場は貫徹されていませんでした。

このように瑕疵担保責任に関しては学説上の対立も激しく、また判例も明確な立場を示していない曖昧な状況であったため、民法改正に伴い、瑕疵担保責任を定めていた改正前民法570条は削除され、代わりに、契約不適合責任が規定されることになりました。この契約不適合責任については次のQ&ampAで詳しく説明をしますが、基本的に債務不履行責任説を前提とした建付けとなっています。

「契約不適合責任」とは何ですか?

ひとつ前の回答にもあるように、改正前民法570条で定められていた瑕疵担保責任は「隠れた瑕疵」という文言や、引き渡された商品に欠陥があった場合の買主の救済ルールがわかりにくいことから、民法改正において全面的に見直しがなされ、改正後民法562条から564条において大幅に書き換えがなされることになりました。

このなかで、「隠れた瑕疵」という改正前民法570条の文言が、改正後民法562条において「(引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して)契約の内容に適合しないものであるとき」として、その意味が明文化されたことから、契約不適合責任と呼ばれています。

この契約不適合責任により、特定物売買であるか不特定物売買であるかを問わず、売主は、数量、品質及び数量に関して契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務を負うことになります。買主は、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合、その救済手段として、①補修や代替物の引渡し等の履行の追完の請求、②代金減額の請求、③損害賠償の請求、④契約の解除をすることができるとされています。

担保責任の期間について

また、契約不適合を理由とするこれらの権利行使については、買主が、目的物が契約の内容に適合しないことを知ったときから原則1年以内にその旨を売主に「通知」すれば足りると変更されました。

商人間の売買については、買主は、目的物受領後遅延なく検査し、不適合を発見したら直ちに売主に通知しなければなりません。直ちに発見することができない性質のものである場合には、買主が目的物の受領後6ヶ月以内に発見して直ちに通知すればよいことになっています。

売買契約の契約書チェックにおける大切なポイント

売買契約においては、一般的に、目的物に不具合があってもめるというのが、もめごとの類型としてはかなり多いですので、売買契約を確認する際には、「契約不適合責任」をチェックすることが、特に重要なポイントとなります。

まずは、契約書の条文の中に(契約不適合責任)という条項を設けておきましょう。相手から受領した契約書にない場合は、新たに条文を追加しましょう。そして、その条文の内容を確認する際には、「担保責任の期間」、「期間内に不具合を見つけた場合の対応方法」、「不具合対応をだれが指示するか」といったポイントを一つ一つチェックし、不具合があった場合に損をしないようにしておくことが大切です。

契約不適合責任の条文例

まずは売主に有利なサンプルは以下の通りです。

第◯条(契約不適合責任)
売主は、本契約●条に定める検収期間内に品質等に問題がある旨の買主の申し出を受けた場合、または、本製品について、受領後の検品において発見できないような問題が本製品引き渡し後●か月以内に発見され、これが売主に通知された場合には、売主の判断により、代替品や不足品の納入、修理、過剰納品の引き取り等の適切な対応を行う。この場合、買主は、売主が選択した方法と異なる方法による履行の追完を要請することはできないものとする。

一方買主側に有利なサンプルは以下の通りです。

第◯条(契約不適合責任)

売主は、本契約●条の検収期間中に、買主からの申し出があった場合、または、本製品について、受領後の検品において発見できないような問題が本製品引き渡し後●か月以内に発見され、これが売主に通知された場合には、買主の指示に基づき、速やかに、売主の費用負担により代替品や不足品の納入、修理、過剰納品の引き取り等を行う。この場合、売主は、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることはできないものとする。

この不具合を申し出ることができる期間について、上記の通り、原則1年、商人間だと6か月と民法及び商法に定められていますが、これは強行規定ではなく、任意規定です。そのため、当事者間で別途合意がない場合には、民法または商法の規定が適用されますが、当事者間で別途の期間を合意しておけば、その合意した期間が適用されますので、当事者間で合意が得られるのであれば、期間を延長したり、反対に、期間を短縮したりできます。

不具合を見つけた場合の対応方法については、売主側として、全て返金対応としたい場合もあるでしょうし、一方修理のみに限定したい場合もあると思います。そういった個々の商品毎の事情に応じて、不具合への対応方法を限定していくことが考えられます。不具合の内容によって、対応方法を変えたい場合もありますので、返金対応とするのか、修理や代替物の納入で対応するのか、といった、不具合への対応方法を、売主側で選べるようにしておく、というのも、重要な点です。

一方買主側としても、売主側の裏返しとなりますが、やはり、全部返金対応が良いのか、代替物の納入がいいのか、修理がいいのか、売買対象物によって、それぞれ希望があると思いますので、買主側が望む不具合への対応方法が列挙されているか、また、列挙されているとしても、不具合があった場合に、返金とするのか、修理や代替物の納入等で対応するかを買主側で選べるようになっているかなどを、確認しておくことが有用です。

また、そもそも、担保責任そのものを免責としたりすることもできますので、チェックの際は注意が必要です。

実際に、どのような条文内容にしておくべきか迷う場合や、個別の案件ごとに調整したい場合は、クラウド・契約書レビューAI「LeCHECK」が修正文案や、契約書雛形を提示しますので、ぜひこちらをご活用ください。


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