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契約業務効率化

契約書の表題の書き方や印紙など契約書レビューでチェックすべき点

2020.09.03

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契約書チェックを行う際に、いつも使っている自社ひな形と書き方が少し違ったり、相手方が書き方を変更してきたりしたとき、これでよいのだろうかなどと悩むときがあると思います。悩みはじめると些細なことでも案外時間を使ってしまいがちです。ここではそういった契約書をレビューするときに気になりそうな契約書の基本的な記述の仕方や印紙について解説いたします。契約締結をスムーズにするためにぜひご活用ください。

契約書の表題(タイトル)の書き方について

契約書の表題(タイトル)については、売買契約書、業務委託契約書、定期賃貸契約書などそれぞれに表記がありますが、実は、これらはどのような書き方であっても法的には問題がありません。とはいえ、契約書の表題は運営管理する上ではとても大切になります。

たとえば、労働者派遣と請負とでは、労働者の安全衛生の確保、労働時間管理等に関して、雇用主(派遣元事業主、請負事業者)、派遣先及び注文主が負うべき責任が異なっています。このため、業務の遂行方法について労働者派遣か請負かを明確にし、それに応じた安全衛生対策や労働時間管理の適正化を図ることが必要になります。そのため、一般的な契約書名称の範囲内で、且つ、中身を正確に反映したタイトルをつけておいた方が良いです。

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集

また、他の例では「業務委託契約」も少し注意すべきタイトルです。

よくビジネスの現場で行われる業務委託契約とは、独自の契約類型があるのではなく、当事者が相手方に対して何らかの業務を依頼する契約の“総称”のようなものです。

実際の契約の中身では、当事者が相手方に仕事を委託し、その仕事の完成に対して対価を支払う契約の場合は請負契約となりますし、同じように業務を委託する場合でも、法律行為や事務処理を委託し、月額や時間単価で支払いをする契約の場合は、委任契約、準委任契約となります。また、寄託契約というものもあります。

このあたりの違いは、こちらのコラムで詳しくご紹介していますのでどうぞご一読ください。

そして、一概に業務委託契約といっても実際の契約の内容によって、請負契約となれば印紙税法上の課税対象文書(2号文書)となり、印紙を貼付する必要があります。

したがって、業務委託契約書と一律に表記してしまっている契約書は多いと思いますが、内容をきちんと確認し、表題は整えておいた方が運営管理上は便利ではあるわけです。他には、保守契約書、リース契約書などについても同様に請負契約となることがあるので注意が必要です。

しかしながら、最近のリーガルテックの潮流である「電子契約」を利用すれば、課税文書を作成しないためこちらの印紙税の支払いは不要となります。

印紙について

契約書の表題のところでご紹介しましたが、印紙税法上の課税対象文書は以下のようになっています。前章でご紹介した請負契約書は2号文書になります

1号 1. 不動産、鉱業権、無体財産、船舶、航空機又は営業の譲渡に関する契約書 2. 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書 3. 消費貸借に関する契約書 4. 運送に関する契約書
2号 請負に関する契約書
3号 約束手形、為替手形
4号 株券、出資証券、社債券、投資信託等の受益証券
5号 合併契約書又は吸収分割契約書等
6号 定款
7号 継続的取引の基本契約書
8号 預貯金証書
9号 貨物引換証、倉庫証券、船荷証券
10号 保険証券
11号 信用状
12号 信託行為に関する契約書
13号 債務保証の契約書
14号 金銭又は有価証券の寄託契約書
15号 債権譲渡又は債務引受の契約書
16号 配当金領収書又は配当金振込通知書
17号 売上代金に係る受取書
18号 預金/貯金通帳
19号 消費貸借通帳、請負通帳
20号 判取帳

国税庁のサイト

印紙税法上の納税義務者は誰になるか

通常の税法は受益者が負担する(お金をもらう人が負担)の考え方に基づいていますが、印紙税は作成した人が支払うルールになっています。したがって、企業間で2通契約書を作成した場合は、それぞれが負担するのが通常でしょう。また、海外の企業と契約締結する場合には、契約書を作成したのが2通とも日本国内の場合は、作成した日本企業が2通の印紙を負担するケースが多いようです。ちなみに、相手方が官公庁の場合は、2通のうち1通のみ印紙を貼り、相手方は貼りません

契約当事者の書き方について

当事者の一方を「甲」として、もう一方を「乙」と書き換えることが一般的です。「売主」と「買主」、「貸主」と「借主」という表記でも問題ありません。甲、乙と表記する理由は、何度も契約締結権限を持つ人物名を書くのは不便だからであって、したがって甲、乙と呼ばなければならないというルールはありません。

甲、乙を使う場合に、自分をどちらに置き換えたらいいのかと思うかもしれませんが、どちらでも全く問題ありません。一般的には立場の上の方(強い方)が「甲」、下の方(弱い方)が「乙」となることが多いです。契約の当事者が2以上の人数になると、甲、乙、丙、丁、戊、己・・・となっていきます。

なお、「甲」「乙」を用いた場合、どちらがどちらを指しているのかを読んでいる最中に失念してしまうこともあり、誤記を招く場合もあることから、最近、「売主」「買主」「受託者」「委託者」といった、一目で立場が分かる記載を用いる例も増えています。当事者名称は、正しく使わないと契約条文の解釈が不明となったり、真逆の意味となったりする場合もありますので間違えないようにしましょう。

そして、当事者を書く上でもっと大切なことは、「誰が何をするのかを省略しないではっきりと書く」ということです。日本語は主語を省略しがちです。しかし、契約書に於いてはトラブルを未然に防ぐという観点からなるべく主語・目的語を明記していくとよいでしょう。

契約書の有効期限について

契約書の書き方は自由とはいえ、必ず書いた方が良いもの一つに「契約書作成日」があります。書く場所は「当事者」の表示の手前に書かれることが多いです。以下に「売買契約書」の極端に短い例を示します。

売買契約書

株式会社○○(以下「甲」という)と株式会社○○(以下「乙」という)とは、以下のとおり売買契約を締結した(以下、「本契約」という)。

(売買の目的)

甲は、乙に対し、東京都港区〇〇―〇〇―〇〇 〇〇ビル 3階の動産一式を売り、乙はこれを買い受ける。

(代金)

乙は、甲に対し、令和○年○月○日限り、東京都渋谷区○○―〇〇―〇〇 〇〇ビル1階において、金○万円を支払う。

(免責事項)

第1条に定める動産一式は現状有姿とし、第1条に定める動産一式に関し、乙は何らの請求もしない。

本契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲乙署名捺印のうえ、各1通を保持する。

令和○年○月○日

甲:             

乙:             

このような短い契約書においては「契約書作成日」を記載すればそれが「契約締結日」となります。したがって、契約締結日から契約は有効になります。

他に契約書の日付の書き方としては、

「第○条 本契約の有効期限は令和○年○月○日から1年間とする。」

と書いたりもします。

この場合の契約書作成日との関係性はどうなるのでしょうか。また、1年間というのはいつからいつまでになるのでしょうか。この場合、契約書作成日が別の日であっても、本契約の有効期限が○月○日から1年間とするというように定められていることになります。ここで一つ注意が必要なのは期間の計算についてです。

契約の期間の計算について

契約書における、期間の計算は、基本的には民法の規定(民138)に従うことになります。

以下、仮に「本日を8月1日」として考えた場合の期間の計算例をご紹介します。

日間単位

  • 「本日から7日間」・・・・・8月2日~8月8日まで
  • 「8月5日から10日間」・・・8月5日~8月14日

月単位

  • 本日から2ヶ月・・・・・8月2日~10月1日
  • 8月5日から2ヶ月・・・8月5日~10月4日(※起算日に応答する日の前日を末日とします)

 

上のように「本日から」と記述した場合は、初日不算入の原則により次の日からの起算になりますので、注意が必要です。ただし例外があります。

例外

  • 本日が午前0時から始まる場合は、本日から起算します。
  • 期間の末日が休日(日曜日、祝日その他の休日)の場合は、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、翌日に満了となります。法律における休日とは、銀行の休日(銀行法52の46、同施行令5)、行政庁の休日(行政機関の休日に関する法律)などがあります

時間

  • 即時から起算

もしも契約書の日付がバックデートしてしまったら・・・

さきほど「契約書作成日が別の日であっても、有効期限を○月○日から1年間とする」という条文例をご紹介しましたが、契約書を作成する現場で起こりがちなのが、契約書作成日が、契約書の有効期限よりも後の日付になってしまっている(バックデートしてしまっている)状況です。

契約書作成に時間がかかりすぎて作成完了した日がすでに起算日を3日も過ぎている…ということもあるかと思います。

契約のバックデートは、以下のようなリスクがあるためにやはり避けるべきです。

  • 想定外の問題が生じた場合にトラブルに発展する可能性がある
  • 会計期間をまたがってしまった場合、業績操作の疑いが生じるリスクがある。

この問題に、きちんと対処するためには、契約の効力が遡及することを認める条項を設ける方法があります。これが先ほどの「第○条 本契約の有効期限は令和○年○月○日から1年間とする」という書き方です。

契約締結権限について

会社間で契約を締結する場合は、契約を締結する権限がある者(原則は代表取締役)が契約締結権限者として契約を締結しているという状態になります。原則は代表取締役である、というのは、会社法上、代表取締役は会社の業務に関する一切の権限を与えられているからです。

ところで、代表取締役が設置されている会社においては、取締役は契約締結権限を有しないのが一般的です。また「社長」というのは社内における役職であり代表権とは関係がないため、社長が代表権を有しない場合ということがあり得るので注意はしてください。

しかし、実態として、特に会社規模が大きくなるにつれて、全ての契約について、代表取締役が確認して署名押印するというのは現実的ではありません。そのため、代表権を持っている代表取締役から代理権を付与された取締役、部長、課長などの役職者が、確認して代理で締結している契約書もかなりの数があります。社内規定で、一定金額以下の契約などについて、他の取締役や、部長等に契約締結権限がある旨を定めている会社も多いです。

但し、会社によって、誰にどのような範囲の契約書の締結権限を与えているかは個別に大きく異なるため、もし、契約の相手方が、例えば事業本部長名義での契約締結を申し出てきた場合、念のため相手方に権限確認をする必要があろうかと思います。また、このような場合は、署名、記名押印の個所にきちんと役職まで記載しておく必要があります。

株式会社ABC ○○事業本部長 山田太郎

そして、代理人が本人に変わって署名押印する場合は、委任したことを明らかにするために、委任状と本人の印鑑証明書を提出してもらう必要があります。

また、最近普及が始まった「電子契約」の中には、契約権限を有する本人が利用するメールアドレスを権限確認の中心としているサービスがありますが、代理押印における真正性をどう考えるかについては前例がありません。利用の際には提供ベンダーに相談しましょう。

署名、記名押印の注意点

契約書には、必ず署名押印の個所があります。署名とは手書きで記載すること。また、記名とは手書き以外の方法で記載することを指します。記名の場合は押印がなければ成立したとはみなされませんが、現在の日本においては「ハンコ」が承諾の意味になっているので署名でも押印をしてもらう必要があると考えたほうが安全でしょう。

まとめ

以上、契約書チェックの際に気になる契約書の書き方の基本をまとめてみました。契約書チェックにおいて大切なのは条文内容のレビューになると思いますが、チェックで読み進めていくと他にも確認しておいたほうが良い点が案外見つかるかもしれません。ぜひ契約書チェックの際に活用してみてください。

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