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英文契約書

英文契約書の権利不放棄条項と通知条項の重要性

2020.05.08

英文契約書の読み方 ~その3~ 権利不放棄条項、通知条項について

今回も、英文契約書特有の条項についてです。 第3回目は、「権利の不放棄条項」と「通知条項」についてです。 (第1回目「完全合意条項」第2回目「分離可能性条項」はこちら

「権利の不放棄条項」とは

  「権利の不放棄条項」とは、例えば、契約書に規定される一定の権利について、その権利を行使できることを知りながら、一定期間行使しないような場合があったとして、このように一定期間行使しなかったからといって、その権利を放棄したものとはみなされないという内容を定めるものです。   具体的には、「本契約に定める権利又は救済手段を一方当事者が行使せず、又は行使が遅延しても、当該当事者が以後本契約の当該規定又はその他の規定を行使する権利が放棄されたことにはならず、かかる権利が影響を受けるものとは一切解釈されないものとする。(The failure, delay or omission of either Party to exercise any right or remedy provided for in this Agreement shall not be a waiver of nor in any way be construed to affect the right of such Party to thereafter enforce that or any other provision of this Agreement.)」というように規定する条項をいいます。   例えば、支払い期限が翌月末であったにもかかわらず、毎月1か月程度遅延して支払っていたところ、相手方がずっと何も言わなかったような事例を想定します。支払い遅延をずっと続けた1年後に、全ての支払遅延について遅延利息を請求された場合、支払い義務者としては、ずっと文句を言わなかったから、翌月末に支払いを受ける権利や、遅延利息を請求する権利を放棄したものだと思っていたと主張するかもしれません。   というのも、権利の放棄は、書面に口頭だけではなく、黙示の放棄(書面や口頭で放棄することを明示した場合以外の放棄)もあり得るもので、その場合、当事者の行動から放棄していたかが認定されるためです。一方、支払いを受ける側としては、忙しくて督促していなかったからといって直ちに権利放棄とみなされるべきではないと主張したい場合もあるでしょう。   この規定は、一定期間権利行使をしなかったとしても、権利放棄とみなされないということで、権利を保有する当事者の立場を守る規定なのです。   但し、この規定の解釈については、米国でも確立した裁判例や見解があるわけではないようで、これがあるから、必ず、権利の行使をしないことが、放棄とみなされないわけではなく、やはり黙示の放棄となるかは事例によるようです。   そのため、この規定を入れていたとしても、相手方の契約違反を知ってその後直ちに文句をいったり、請求をしなかったことが、不利益に扱われないという保証はないため、やはり、相手方当事者の契約違反を知った場合には、権利の放棄とみなされないよう、できるだけタイムリーに直ちに履行するようにとの督促をしておいた方が安全ではあります。  

「通知条項」とは

  次に「通知条項」ですが、これは具体的には、「本契約に基づき行われるすべての通知は、書面により、両当事者それぞれの下記住所を宛先とするものとする。【以下具体的な住所などを記載。ファックスやE-mailによる通知を正式な通知として認める場合には、ファックス番号やE-mailアドレスも記載】(All notices given under this Agreement shall be in writing and shall be addressed to the Parties at their respective addresses set forth below:【連絡先を記載】)」というような規定を定めます。   相手方に債務不履行があって解除したいような場合、適切に一定期間内に債務を履行してください、というような督促を送り、その後、督促しても債務不履行状態が治癒されないので解除します、と正式な通知を送付する必要がありますが、特に契約期間が長くなった場合など、相手方担当者が退職したり、代表者が交替したり、相手方の本店所在地が変わったり、支店ができ、その支店が取引担当となったりなど、どこに通知を正式な通知として有効であるか判断できないような場合もあり得ます。   そのような場合に備えて通知条項を入れて置き、相手方から変更の連絡がない限りは当該通知先に送付すれば正式な通知が可能としておくための規定となります。国内の当事者間の場合と比して、本店所在地や担当者の変更などの通知が滞る場合も多いですので、特に海外との取引の場合は入れておいた方が良いと思われます。


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