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民法改正

民法改正・危険負担について見直しがされています

2020.03.13

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1. 危険負担とは

民法には「危険負担」という制度があります。

これは、専門用語で正確に言うと、売買契約等の当事者双方が義務を負う契約において、一方の債務がその債務者の責めに帰すべき事由によらないで履行不能となった場合に、その債務の債権者が負う反対給付債務の帰趨がどうなるかを定める制度です。

具体例がないとわかりにくいと思いますので、例を挙げると、例えば、売主Aと買主Bが建物の売買契約を締結すると、売主Aは建物の引渡債務を負い、買主Bは代金支払債務を負います。建物が引き渡される前に放火(売主Aに責任のない放火)で滅失してしまった場合、売主Aの建物引渡債務は売主Aの責めに帰すべき事由によらずに履行不能となります。この場合に、建物引渡債務の反対給付債務である買主Bの代金支払債務がどうなるのか、すなわち、買主Bは、建物の引渡しを受けることができないけど、代金を支払う必要があるのか、という問題です。

これは、建物の滅失による「危険」を債権者(買主B)と債務者(売主A)のいずれが「負担」すべきか、という問題です。

ここで「債務者主義」となる場合は、債務者(売主A)が危険を負担することとなり、反対給付債務である代金支払債務は消滅し、買主Bは代金を支払う必要がなくなり、売主Aは代金を受領することができなくなります。売主Aは、建物も滅失し、代金の支払いを受けられなくなりますので、売主Aが滅失という危険を負担することになるのです。

一方「債権者主義」となる場合は、債権者(買主B)が危険を負担することとなり、反対給付債務である代金支払債務は存続し、買主Bは、建物の引渡しを受けることができないにもかかわらず、代金を支払わなければなりません。つまり、買主Bが滅失という危険を負担することになります。

2. 改正前の危険負担

改正前の民法においては、原則は「債務者主義」を採用していましたが、「特定物に関する物権の設定又は移転を目的とする双務契約」については、「債権者主義」を例外的に採用していました。なお、特定物とは、不特定物に対比される言葉で、建物や馬、中古の車、中古のオフィス家具、中古の鞄など、その物の個性に着目して指定される物です。数量と種類を特定して売買するのは不特定物ですが、その物の個性に着目して、その物を購入する場合には特定物の売買なのです。

つまり、建物は特定物です。そのため、上の事例のような建物の売買契約において、民法上は、建物の引渡し前に売主Aの責めに帰すべき事由によらずに建物が滅失した場合、債権者である買主Bの反対給付債務は存続し、買主Bは建物の引渡しを受けられないのに代金を支払わなくてはならない、ということになっていました。もちろん、別途契約書で定めるなど、特別に別途の合意をすれば、その合意通りになり、実務上は、特約で修正されている例が多いのが現状ではありました。 但し、合意がなければ民法の通りとなりますので、これについては買主Bに過大なリスクを負わせるもので不当だ、という批判が強くありました。

3. 改正後の危険負担

そこで、改正後の民法においては、従前の例外的に債権者主義を定めた規定を削除し、建物の売買のような「特定物に関する物権の設定又は移転を目的とする双務契約」においても債務者主義を採用しました。

具体的には、債務者(売主A)の帰責事由によらずに債務(目的物引渡債務)が履行不能となった場合には、債権者(買主B)は反対給付(代金支払債務)の履行を拒むことができることを定めています。

また、債権者(買主B)としては、契約を解除することにより、反対債務(代金支払債務)を確定的に消滅させることができます(改正後の民法では、債務不履行につき債務者の帰責事由がなくとも、債権者は契約の解除をすることができます)。


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