法務サポートコラム

下請法  その2

2020年04月10日配信

今回も、「下請法」についてです。(その1はこちら
下請法の下での親事業者側の義務についてご説明します。

 

 

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3. 親事業者の義務事項

 

(1)書面の交付義務
電話で「○月○日までに○○を○本作って。代金は○円ね」という発注の連絡をする場合、発注者側としては気軽でよいかもしれませんが、受注者側としては、取引条件が不明確です。後で言った・言わないの問題になるかもしれないし、更には後で発注が無かったことにされてしまうかもしれないし、それでも、発注の連絡が来た以上、製造に取りかからざるを得ず、苦しい立場です。

 

このような口頭による発注のトラブルを回避するため、親事業者は、発注をした場合、直ちに、発注内容を明確に記載した書面を下請事業者に交付しなければなりません。記載すべき事項は以下のとおりで、原則として該当するものをすべて決定した上で記載する必要があります。電話のみで発注し、この書面を交付しない場合、書面の交付義務違反となり、50万円以下の罰金となり得ます。

① 親事業者及び下請事業者の名称(番号、記号等による記載でもよい)
② 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
③ 下請事業者の給付の内容
④ 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
⑤ 下請事業者の給付を受領する場所(役務提供委託の場合は、役務が提供される場所)
⑥ 下請事業者の給付の内容(役務の内容)について検査をする場合は、その検査を完了する期日
⑦ 下請代金の額
⑧ 下請代金の支払期日
⑨ 下請代金の全部又は一部の支払につき手形を交付する場合は、その手形の金額(支払比率でもよい)及び手形の満期
⑩ 下請代金の全部又は一部につき一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
⑪ 下請代金の全部又は一部につき電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
⑫ 原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法

 

なお、この書面の記載事項のうち、例えば、ソフトウェア作成委託においてユーザーが求める仕様が確定しておらず、正確な委託内容を決定することができない場合など「その内容が定められない正当な理由がある場合」には、その事項を記載せずに書面を交付することが認められます。この場合には、記載しなかった事項について、内容が定められない理由及び内容を定めることとなる予定期日を書面に記載する必要があります。また、その内容が確定した後には、直ちに、その事項を記載した書面を交付する必要があります。

 

(2)書面の作成・保存義務
親事業者は、下請事業者との取引について記録する書面を作成し、2年間保存する義務があります。これは、親事業者に対して違反行為についての注意喚起をするとともに、公正取引委員会等による調査・検査に役立つことを目的としています。記載事項は以下のとおりです。

① 下請事業者の名称(番号、記号等による記載でもよい)
② 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
③ 下請事業者の給付の内容
④ 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は役務が提供される期日、期間)
⑤ 下請事業者から受領した給付の内容及びその給付を受領した日(役務提供委託の場合は、役務が提供された日・期間)
⑥ 下請事業者の給付について検査をした場合は、その検査を完了した日、検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
⑦ 下請事業者の給付の内容について、変更又はやり直しをさせた場合は、その内容及び理由
⑧ 下請代金の額
⑨ 下請代金の支払期日
⑩ 支払代金の額に変更があった場合は、増減額及びその理由
⑪ 支払った下請代金の額
⑫ 下請代金の支払につき手形を交付した場合は、手形の金額、手形を交付した日及び手形の満期
⑬ 一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び機関の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
⑭ 電子記録債権で支払うこととした場合は、電子記録債権の額、支払を受けることができるとした期間の始期及び電子記録債権の満期日
⑮ 原材料等を有償支給した場合は、その品名、数量、対価、引渡しの日、決済をした日及び決済方法
⑯ 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価を控除した場合は、その後の下請代金の残額
⑰ 遅延利息を支払った場合は、遅延利息の額及び遅延利息を支払った日

 

(3)支払期日を定める義務
下請取引においては、大規模な発注者側が下請代金の支払期日を不当に遅くに設定しがちです。
そこで、下請法において、親事業者は、給付の内容について検査するかどうかを問わず、下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は下請事業者が役務を提供した日)から起算して60日以内のできるだけ短い期間内で、下請代金の支払期日を定める義務があります。
 
支払期日を定めなかった場合など(すなわち、支払期日を定める義務違反があった場合)には、以下のように支払期日が法定されます。
ア 当事者間で支払期日を定めなかったときは、給付を実際に受領した日
イ 当事者間で合意された取決めがあっても、給付を受領した日から起算して60日を超えて定めたときは、受領した日から起算して60日を経過した日の前日

「法定」なので、当事者間で支払期日を定めなかったときは、当事者の合意がなかろうと、給付を実際に受領した日が支払期日となり、給付を受領した日から起算して60日を超えて支払期日を定めた場合は、それが当事者間の合意であっても、受領した日から起算して60日を経過した日の前日となります。

 

(4)遅延利息の支払義務
上記(3)は、支払期日を不当に遅くに設定してはいけないという規律ですが、下請法にのっとった支払期日が設定されてもその支払期日に支払がされずに支払が遅延するということもあり得ます。
 
親事業者は、支払期日までに下請代金を支払わなった場合、給付を受領した日から起算して実際に支払がされる日までの期間の年14.6%の遅延利息を下請事業者に対して支払う義務があります。この遅延利率は、民法や当事者で合意した利率に優先し、当事者間で遅延利息を年3%と定めていたとしても、約定利率が排除され、年14.6%が適用されます。
一般的に、親事業者の方が、自社雛型を使うなどする場合、自社が支払う側であれば、支払い遅延の場合について、規定を入れず法定利率によるか(この4月からは3%です)、さらに低い利率としている場合もありますが、無効にされてしまいますので注意しましょう。

 

次回は、親事業者の禁止事項について説明します。
 
 

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