法務サポートコラム

仲裁って何?

2020年01月17日配信

海外企業との契約書には、よく、「この契約書に関する紛争は仲裁で解決する」、との規定があるのですが、今回は、この「仲裁」について説明したいと思います。

 

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1 取引の相手方と紛争が生じた場合の解決プロセス

 

そもそも相手方の企業と紛争になったとき、どのように解決していくでしょうか。まずは相手方企業との話し合いを行い、妥協できる解決を探していくのが一般的です。それでは、話し合いで妥協できる解決が見いだせなかった場合はどうでしょうか。

 

いろいろなパターンがありますが、仲介に入ってくれそうな第三者が入れば、間に入ってもらってお互いに妥協できる解決を探すというパターンがあります。単に知り合いに間に入ってもらうこともあるかもしれませんが、中立な第三者に間に入ってもらい、その第三者として妥当と考える和解案を提示してもらうなどする、調停という制度もあります。裁判所で行われる離婚調停もこの調停の一種で、調停委員などの第三者が間に入り、お互いの見解(妥協案)を伝えたり、調停委員として妥当だと思う和解案を考えたりしてくれますが、最終的には、紛争の両当事者がその案に合意して初めて和解成立となります。その意味で、調停は、強制的に何らかの結論を出す仕組みではありません。

 

そういった第三者を交えた話し合いでも妥協点を見いだせなかった場合や、このような調停を行う機会がなかった場合には、諦めるか、又は、弁護士を雇うなどして、裁判などの法的手続を取り、その中で、裁判官に判断して決めてもらうことになります。裁判では、裁判官が、両方の当事者の主張やそれぞれから提出された証拠を踏まえ、一定の結論を出すため、一方の当事者がこれに不服であっても、従わざるを得ないこととなります。話し合いや調停を経ても、どちらか又は両方の当事者が納得する妥協点を見いだせなかった場合には、この解決手段を取らざるを得ません。
 
仲裁は、このような強制的な解決手段の一種で、裁判と同様に、両方の当事者が、その紛争についてのそれぞれの主張や証拠を提出し、これを仲裁人が判断するという制度です。「仲裁」という言葉を聞くと、けんかの仲裁のように間に入って取り持つようなイメージを持たれる方も多いのですが、法律の世界の「仲裁」は、裁判に似た紛争の最終的な解決を第三者の判断に委ねる制度です。

 

 
 

2 仲裁はどういう場合に利用されるの?

 

さきほど、当事者間での交渉や調停を経ても和解できない場合、裁判や仲裁で、第三者に判断してもらって紛争を解決するしかないことをご説明しましたが、どのような場合に裁判ではなく仲裁となるのでしょうか。
 

仲裁を利用するためには、仲裁によって紛争を解決することについての当事者間の合意が必要となります(これを仲裁合意といいます)。紛争が生じてから、仲裁合意をする場合もありますが、多くは、取引についての契約書に、紛争を仲裁で解決する旨定めている場合の方が多いです。

 
 

3 仲裁のメリット

 

(1) 国際的な取引における一番のメリット

海外企業との取引、特に中国やアジアの発展途上国に所在する企業との取引においては、契約書において、仲裁合意を入れておくことのメリットは極めて大きいです。
この点、日本企業側からすると、東京地方裁判所等の日本国内の裁判所にしておいた方が安心ではないかと考えられるかもしれません。特に、相手方の外国企業との関係で、交渉力が強い場合には、そのような紛争は東京地裁で解決というような規定を入れておくことはできるかもしれません。ただ、これは、弁護士としては強く反対します。というのも、このような規定に基づき、日本で裁判を起こし、相手方の外国企業に対する判決を取得したとしても、これを強制執行することができないためです。言い換えると、例えば、海外企業から注文を受け、商品を納入したにもかかわらず、当該企業から入金がなかったとします。何度連絡してもなしのつぶてであるため、東京地裁で訴訟を提起し、その企業に対する判決(その商品代金を直ちに支払えという内容)を取得したとします。それでも相手方企業が払ってこなければどうすればいいでしょうか。

 

このような場合、国内企業同士であれば、強制執行といって相手方の不動産や銀行口座、売掛債権などを差し押さえるなどして、強制的に支払を受けることができます。もっとも、海外企業が相手で、その企業が日本に財産を有していない場合、日本の裁判所の判決そのままでは絵に描いた餅であり、外国の裁判所に持っていって執行(不動産等の財産の差押えなど)してもらう必要があるのです。

 

ところが、中国や、フィリピン、ベトナム、タイ、インドネシアといったアジアの国においては、日本の裁判所による判決は執行してくれません。ところが、仲裁において仲裁人が下した仲裁判断は執行してくれる可能性があるのです。これは、これらの国も日本も、ニューヨーク条約という外国仲裁判断の執行等に関する条約に加盟しているためです。
このため、相手方の外国企業が日本に相当の財産を保有している場合を除き、仲裁合意をしておかないと、相手方が契約書とおりに支払わない場合、強制的に相手方の財産から回収することができないということになります。そのため、取引を開始する際に、契約書において仲裁合意を定めておくことが極めて重要であり、これが国際的な取引における仲裁合意の一番のメリットとなります。
 

(2) 仲裁のその他のメリット

仲裁にはそれ以外にもメリットがあり、例えば、仲裁においては、仲裁人として裁判官のような法律の専門家だけではなく、各分野の専門家を選ぶことができるため、例えば、建築紛争などの場合、建築の専門家を仲裁人として、その建物に瑕疵があったか否かというような点を判断してもらうことができます(専門性)

また、裁判の場合、日本は三審制を取っていることから、第一審の裁判所で敗訴したとしても、敗訴した当事者はこれを控訴して控訴審裁判所で争い、ここで負けても、更に最高裁判所に上訴することもあり得ます。一方、仲裁の場合は、原則不服申立ができませんので、一回で決着するという特色があります(迅速性)

 

更に、仲裁の場合には、例えば、日本企業とインドネシアの企業間の紛争を、シンガポール国籍の仲裁人が判断するなど、中立性が保たれるといわれています。というのも、裁判の場合、どうしても、どちらかの当事者の国の裁判所、この例では、日本またはインドネシアの裁判所とならざるを得ず、自国企業を贔屓するのではないかとの懸念があるためです(中立性)

 

裁判の場合には公開が原則であるため、報道機関等が傍聴に来るということもあり得ますが、仲裁は非公開の手続です。当事者間で争っていることを知られたくないような場合や、営業秘密等が問題になっている場合には、秘密性が保たれるという点も、仲裁のメリットであると言われています(秘密性)

 

もちろん、迅速性がメリットといっても、逆を言えば、仲裁で負けてしまった場合、これを争う手段がないというのはデメリットにもなり得るものです。ただし、既に述べたとおり、発展途上国等との取引については、仲裁合意を定めておかないと、相手方の支払等を強制する手段がなくなる場合もありますので、強く、仲裁合意を定めておくことをお勧めします。
 
英国やアメリカなどの国の相手方企業の場合には、日本の裁判所での判決も英国やアメリカでは執行できますので、日本の裁判所を紛争解決手段とすることが合意できるのであれば、仲裁に変える必要性は高くはありません。ただ、もし、英国やアメリカなどの相手方の国の裁判所とされた場合には、仲裁合意をするのも選択肢となります。というのも、英国やアメリカでの訴訟には膨大な費用がかかるため、仲裁の方が紛争解決費用を抑えられる場合も多いためです。
また、それ以外の取引についても、上記のとおりのメリットがありますので、仲裁合意をしておく方が良い場合もありますが、事例ごとの判断が必要かもしれません。

 

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