法務サポートコラム

新型コロナ感染症の影響と契約上の責任の不履行や遅延

2020年06月05日配信

今回は、新型コロナ感染症の影響による契約上の責任の不履行/遅延の場合について書いてみたいと思います。

実際にニュースなどでも、新型コロナ感染症の影響で、中国から部品が入らないため、製造できず、期限までに納品できない、といった事例が取り上げられるなどしていますが、新型コロナ感染症のせいで、期限までに納品できないなど、契約上の責任を果たせない場合について、法律上はどのように考えるべきでしょうか。

 

 


 

 
 

まず、契約書に「不可抗力」の条項がある場合について検討します。
 

契約書における「不可抗力」とは、当事者の責めに帰することができず、かつ、当事者には制御できない出来事をいいます。不可抗力に当たる場合として、例えば、戦争、テロ、ストライキ、クーデター、災害などがあります。
 
そして、「不可抗力免責条項」とは、不可抗力によって、契約の目的を達成することができない場合や、債務が期限までに履行できないとか、そもそも履行が不可能になった等の場合にも損害賠償責任を負わない旨などを定めた条項をいいます。例えば、ある製品の売買契約で、地震の影響で部品が入ってこなくなり、いろいろ手を尽くしたものの、他の業者からもその部品を仕入れることができず、結果的に、製品を納入期限までに納めることができなくなったような場合に検討する条項となります。
 
契約書の不可抗力免責条項には、「不可抗力とは、当事者が合理的に支配しえない出来事に起因する事由(暴動、疫病、戦争、テロ行為、津波、地震又はその他の自然災害、原発事故、ストライキ、ロックアウト又はその他の労働争議を含むが、これらに限られない。)を意味する。」というように、不可抗力にあたる事由を列挙するのが一般的です。そして、この例示にパンデミックや伝染病が明示されていれば、新型コロナ感染症の蔓延が不可抗力にあたることになるでしょう。
 
また、政府による命令、規制等を例示されている場合は、新型コロナウイルス対策として実施された、営業活動や人の移動、旅行、その他の活動の制限的な措置も不可抗力にあたると判断される場合もあり得ます。もっとも、政府による命令、規制等が例示されている場合でも、日本における緊急事態宣言がこれに当たるか一考が必要です。
 
 

  • (契約書に「不可抗力」の規定があるが)不可抗力にあたる事由を列挙していなかった場合

不可抗力事由として上記のような文言が例示されていなかった場合でも、「その他事由」といった包括的な文言が定められている場合があります。また、事由の列挙が、あくまでも例示であることが明確に記載されている例もあります。
具体的には、「戦争、テロ行為、地震、〇〇、〇〇を含むがこれに限らない」とか「〇〇”>等の不可抗力の事由が発生した場合」というような記載の場合です。これは、明示されていないものも不可抗力に当たる余地を残すものです。これら場合には、新型コロナ感染症の蔓延が、列挙はされていないものの、やはり不可抗力に該当するとの主張も可能です。

 

但し、このような包括的な文言は、併記されている例示事由に類似する事由を意味すると解釈される場合があり、戦争やテロ行為のみを列挙し、病気や政府命令といったものから遠いものしか例示していない場合などは、新型コロナウイルスが不可抗力に当たらないと判断される可能性もあります。

 

なお、改正民法419条3項は「不可抗力」という文言を用いています。何が不可抗力にあたるかという契約の解釈には、同条項の解釈は参考になりまが、同項は、「不可抗力」とは、「外部からくる事実であって、取引上要求できる注意や予防方法を講じても防止できないもの」、「大地震・大水害などの災害や、戦争・動乱などが代表的な例」とされています。コロナウイルスの蔓延は、契約の外部からくる事情であり、現状を見ると、予防方法を講じても必ずしも防止できるものではないため、同条項を根拠に、「不可抗力」に該当するとの主張もありうるかもしれません。

いずれにしても、契約書に不可抗力の規定が定められている場合には、これを注意深く確認しつつ、これに基づいて、納期等が遅れた場合についても、責任を負わない旨を主張するという方策がとれることとなります。
 
 
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  • 債務不履行に帰責性がないとの主張

契約書によっては、「不可抗力」についての定めがないものもあります。このような場合は、新型コロナのために納入遅延などが生じても、やはり通常の納入遅延と同様に責任を負うのでしょうか。
この点については、債務不履行による損害賠償請求がなされたとしても、債務者側が、帰責性がなかったことを立証すれば責任を負わないというのが法律上の規定ですので、このような立証ができれば、責任を逃れることも可能になり得ます。

 

ただ、債務不履行で帰責性がなかったとの立証はそれほど容易ではありません。例えば、コロナの影響があったとしても、回避策をいろいろ取ればちゃんと納入出来たというような事例であれば、帰責性ありとされる可能性もありますし、契約締結時点が、日本での感染例が未だになかった時点、日本での症例が確認された初期段階、その後全国的に流行した段階と、時系列によっても判断が変わってくるようなこともあり得ます。

 

そうはいっても、不可抗力規定がない場合には、可能な対応策はすべて採ったものの、コロナの影響でどうしても納品できなかったので、帰責性はなく、損害賠償責任は負わないと主張するというのは、交渉で試してもよい方策となると思います。

 

なお、上記の不可抗力の規定がある契約書の場合も、帰責性がないので損害賠償責任を負わないとの主張は可能ですので、重ねて主張してもよいと思います。

 
 

 


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