法務サポートコラム

業務委託契約の書き方 ~その1~

2020年07月10日配信

今回からは、業務委託契約書についてシリーズで書いていこうと思います。
今回は、「業務委託の概要」や、「他類型の契約との違い」について説明します。
 
 

 

 
 

業務委託契約とは

 
まず、民法上「業務委託契約」という類型の契約が定められているわけではありません。
 
「業務委託契約」とは、その名のとおり、特定の「業務」を第三者に「委託」することを内容とする契約ですが、業務の内容及びその委託の方法如何によって、民法上、「請負契約」又は「準委任契約」に整理されます。
 
なお、厳密には、「委任契約」とは、委任の対象となる行為が法律行為である場合をいい「準委任契約」とは、法律行為以外の事実行為を対象とする場合をいいます
 
具体的な内容は後述しますが、請負契約と準委任契約では、契約当事者が有する権利義務が民法上異なります。
契約上明記されていない部分は、原則として民法上の定めにより補完されるため、民法上どちらの契約に属するのかという点は重要です。
 
また、当該契約が「請負契約」であると判断される場合、その契約書は印紙税の対象文書となり、実務上印紙税の要否という点で取扱いが異なることからも、業務委託契約の法的性質を確認することが必要になります。(ただし、電子契約で締結する場合には、印紙税が不要となります。)
 
以下では、その法的性質が請負契約である業務委託契約を「請負型業務委託契約」準委任契約である業務委託契約を「準委任型業務委託契約」と呼ぶことにして、説明をします。
 
 
 

業務委託契約書と雇用契約書の違いについて

 
「雇用契約書」と「業務委託契約書」の違いは、指揮命令に従って業務を提供するかどうか、という点です。
 
「雇用」の場合には、相手方の指揮命令に従って労務を提供する必要があります。
一方、「業務委託」の場合には、仕様等に従う必要はありますが、細かい業務について、自己の裁量で行い、指揮命令を受けないという前提になります。
 
なお、「雇用契約」の場合、当該契約は労働基準法等の適用を受けることになるというのも、相違点になります。
つまり、主として労働者保護に関する規律(労働時間の管理や解雇の制限等)に服することになります。
 
「業務委託契約」と「雇用契約」のいずれに該当するかにより、当事者間の権利義務の内容が大きく異なりますし、また、労働基準法等を潜脱する目的で、実態は雇用契約や派遣契約であるにもかかわらず、名目上請負契約である等と偽って、派遣法や労働法の適用を免れる、という、いわゆる偽装請負は社会問題にもなっていたところですので、十分に注意をしなければなりません。
 
当該契約が「雇用契約」と「業務委託契約」のいずれと評価されるのかという点は、労務の配給を行う者が「労働者」であるか否かによって決定されます。
 

労働者に該当するかの判断について

この「労働者」に該当するか否かの判断は、
①労働が他人の指揮監督のもとで行われ、
②その対価として賃金が支払われる関係があったことを示す事実関係の有無に基づいて行われます。
契約書の名称ではなく、その実態を重視して検討されるので注意をしましょう。
 
具体的には、
①(a)仕事の依頼、業務従事の指示等に対する許諾の自由の有無、(b)業務遂行上の指揮監督の有無、(c)場所的・時間的拘束性の有無、(d)他の者との労務提供の代替性・専門性の有無、
②報酬が労務の対価といえるか否か(ちなみに報酬が労務の時間の長さに応じて決まる要素が強いほど対価的要素が強くなり、雇用契約としての色合いが強まります。)といった事実の有無に加え、
補完的に③(a)労務提供者が労働者ではない独立の事業者といえるか(機械・器具の負担関係、報酬の多寡等)、(b)特定の企業に対する専属性の程度、(c)選考の過程、公租公課の負担関係等を加味して判断することになります。
 
 

 
 

「請負型業務委託契約」と「準委任型業務委託契約」の違いについて

 
「請負型業務委託契約(請負契約)」と「準委任型業務委託契約(準委任契約)」の大きな違いは、委託された業務について、請負人が、特定の成果物を完成させる義務を負うか否かという点です。
 

    請負契約とは

「請負契約」とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成させることを約束し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約です(民法632条)。請負型業務委託契約の典型的な例としては、物の製作・加工、建物の設計・建築、物品の郵送、音楽の演奏等が挙げられます。
 

    準委任契約とは

他方、準委任契約とは、当事者の一方(委任者)が法律行為以外の行為をすることを相手方(受任者)に委託し、受託者がこれを行うことを約束する契約です(民法643条、656条)。(なお、法律行為を委託する場合を委託契約といいますが、同じ準則が妥当するため、委任事務の内容が法律行為なのか否かという区別は、そこまで大きな意味を持つところではありせん。)準委任型業務委託契約は、およそ事務処理が必要になる場面で登場しますが、例えば、医師に診察を依頼する場合、介護サービスを依頼する場合等が挙げられます。
 
より簡単に書くと、一定の成果を求め、その成果に対して対価を支払うのが「請負契約」月額や時間に応じた額など、特に成果と連動しない形で報酬が定められている契約が「委任契約」、「準委任契約」となります。
 
 

 
 

「請負契約」で、請負人及び注文者が負う義務は?

 
請負人は、注文者に対して契約で引き受けた仕事の完成義務を負います。
目的物の引渡しを必要とする場合には、約束した時期に完成した物を引き渡すことも仕事の完成に含まれます。
 
他方、注文者は、完成した仕事の結果に対して報酬を支払う義務があります。
この請負の報酬は、契約上特段の定めがない限り、目的物の引渡しが必要な場合には引渡し時に、引渡しが不要な場合には目的物完成時に支払わなければなりません(改正後民法633条)。
 
また、改正前民法では、契約が途中で解除された場合の報酬の支払いの要否について定めがなかったため、この点が争いになるケースが多々ありました。
 
そこで、改正後民法では、仕事を完成することができなくなった場合又は請負契約が仕事の完成前に解除された場合について、中途の結果のうち可分な部分によって注文者が利益を受けるときは、その利益の割合に応じて報酬の請求をすることが可能であることが明文化されました(改正後民法634条)。
 
なお、この点は、契約書で別途の定めを置くことも可能ですので、途中で終了した場合の成果物の引渡や、委託料の支払について、事前に明確に定めておいた方が揉めなくてよいでしょう。
 
また、請負人は完成した目的物が契約の内容に適合しない場合には、担保責任を負います(改正後民法559条、562条)。
 

担保責任の内容について

この担保責任の内容について、改正前民法では、注文者は、①修補等の履行の追完②損害賠償請求③注文の解除を求めることができるとされていましたが、改正後民法ではこれらに加えて、④代金減額請求もできることが明文化されました。
 
なお、細かな点にはなりますが、改正前民法では、土地工作物(建物等)の建築請負では、社会経済上の損失の大きさを考慮して深刻な瑕疵があっても注文者は契約を解除することができないとされていましたが(改正前民法635条但書)、この条文は改正後民法では削除されることになりました。
 
さらに、改正前民法では、注文者が請負人に対して担保責任を追及するためには、原則として目的物の引渡し等から1年以内とされていました。(但し、例外として建物等の建築請負では引渡しから5年以内、当該建物等が石造、金属造等の場合には引渡しから10年以内に権利行使)。
 
この点については、瑕疵に気づかず期間が経過してしまうとの批判もあったことから、改正後民法では、契約に適合しないことを知ってから1年以内(但し、引渡から10年以内)にその旨の通知をすれば、請負人の担保責任を追及することができる(ただし、注文者が引渡し時において目的物の不適合につき悪意・重過失の場合を除く。)と変更されました(改正後民法637条)。
 
例えば、システムに不具合があった場合など、これまでは引き渡しから1年間が担保期間であったところ、10年以内に気が付いて連絡すれば、修正等を修正できるというのが改正後の民法上の規定ということになります。そのため、それほど長く修繕義務を負いたくないという場合には、システム開発契約等で、別途の合意(1年以内に発見されたバグしか対応しませんと明記するなど)をしておくことが、受託者にとっては非常に重要になってきます。
 
 

 
 

「準委任型業務委託契約」で、受任者及び委任者が負う義務は?

 
受任者は、前述のとおり、委任者から委託された行為(委任事務)を行う義務があります。
そして、委任事務の処理を、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって行う義務を負います(善管注意義務、民法644条)。
 
委任者から請求を受けたときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了したときは、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならないとされています(報告義務、民法645条)。
 
また、委任者は、受任者を信頼してこの人になら任せられると判断して委任事務を委託していると考えられることから、委託された事務の処理について他の者に再委任することは原則として認められません
 
改正後民法では、この点が明文化され、受任者は委任者の許諾を得たとき又はやむを得ない事由があるときでなければ更なる受任者(復受任者といいます。)を選任することができない旨明文化されました(改正後民法644条の2)。
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができません(民法648条1項)。
 
 

履行の途中で委任が終了した場合について

履行の途中で委任が終了した場合については、改正前民法では、受任者に帰責性がない場合に限り、履行の割合に応じて報酬を請求することができるとされていました(改正前民法648条3項)が、仮に受任者に帰責事由があったとしても、既になされた委任事務の履行に対しては履行の割合に応じて報酬を請求できるとするのが合理的であることから、改正後民法648条3項において、委任者に帰責性のない事由によって委任事務の履行をすることができなくなった場合(なお委任者に帰責性がある場合には、報酬全額の請求が可能です。)又は委任が履行の途中で終了した場合には、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができると変更されました(改正後民法648条3項)。
 

特定の成果に対して報酬を支払う旨の合意がされた場合について

また、特定の成果に対して報酬を支払う旨の合意がされた場合については、引渡しが必要なときには、報酬の支払いと同時履行の関係にたつことを明示した上で、成果が得られる前に、委任者に帰責性のない事由によって委任事務の履行ができなくなった場合(なお委任者に帰責性がある場合には、報酬全額の請求が可能です。)又は成果が得られる前に委任契約が解除された場合において、既に履行した委任事務の結果が可分でその部分によって委任者が利益を受けるときは、受任者は、その利益の割合に応じて報酬を請求することができるとされました(改正後民法648条の2第2項、634条)。
 
 
以上が「業務委託契約」の大枠となります。
次回以降は、業務委託契約書レビューのポイントについて書いていきたいと思います。
 
 

 


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