法務サポートコラム

英文契約書の完全合意条項(entire agreement) における留意点

2020年04月24日配信

英文契約書の読み方 ~その1~ 完全合意条項について

今回から、英文契約書特有の条項について書いてみたいと思います。
第一回目は、「完全合意条項」についてです。

 

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「完全合意条項(entire agreement)」とは?

「完全合意条項」とは、例えば、「本契約は、本契約の主題事項に関する両当事者間の完全な合意を定めるものであり、両当事者間の従前の一切の合意事項、了解事項及び表明に優先する。(This Agreement covers the entire understanding between the Parties with respect to the subject matter hereof and supersedes all prior agreements, understandings and representations between the Parties.)」というように規定する条項をいいます。

 

つまり、契約の主題事項(例えば、土地の売買契約であれば、土地の売買という主題)についての、両当事者間の合意事項の全てを定めるもので、この契約外で、例えばメールや口頭で、この土地の売買に関して様々な約束をしていたとしても、この契約の規定する条件が優先します、という意味です。

 

こういった規定があった場合には、例えば、契約交渉の場で、トップ同士で様々な約束をしたとしても、あとで守ってもらえなくても、契約書上書いていないことは認められないなどと、相手方から主張されてしまうかもしれませんし、担当者間で、メール等で確認しておいた事項についても、同様に無効だと言われてしまうリスクがあるということになります。

 

そのため、こういった完全合意条項が入った契約の場合は、何か守ってもらいたい追加の条件などがある場合に、口頭やメールなどで確認せず、契約書に追記しておく必要があるということになります。

 

なお、このような完全合意条項ですが、あまり日本国内の企業間での契約書で入っている例は多くないのですが、元々英米法の考え方から生じた条項であり、海外との取引(特に米国や英国法系のコモンローの国との取引)で用いられる契約書では入っていることも多いかと思います。但し、近時は、M&Aに関する取引等、国内企業間の契約でも入っている場合もあるようです。

 

今後締結する契約については上記の通り、留意すればよいですが、過去の契約においては、あまり契約書の内容に留意せず、完全合意条項が入った契約書に押印してしまったけれども、実際に担当者間では別途の約束をしていたような場合もあるかもしれません。そのような場合、本当に別途の約束を守ってもらえないのでしょうか?

 

もちろん、まずは、契約書には書いていなくても実際に約束したではないかということで、当事者間で交渉することとなるかと思います。
ただ、完全合意条項を盾に、契約上、契約書に書いていない約束は無効だから応じられないと主張された場合はどうでしょうか。この場合は、法的手続きを取って、その約束の履行を強制できるかが問題となります。

 

まず、日本法上、こういった完全合意条項が入った契約書の解釈についての規定は定められていません。ただ、裁判で争われた例はあり、その際には、完全合意条項を含む契約書について、契約外の合意の存在を否定しており、日本でも、完全合意条項は有効と考えられています。

 

そのため、上記のような場合には、口頭やメールでの約束の履行を強制する手段はないということになります。

 

以上から、少なくとも、今後締結する契約においては、完全合意条項が入っている場合には、履行を確保したい約束について、必ず契約上明記する方が良いということになります。また、完全合意条項は、言った言わないの争いを防いでくれる効果はありますので、重要な契約で、条件を明確に定めたい場合など、敢えてこちらから完全合意条項を提案した方が良い場合もあるかもしれません。

 

 


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