COLUMN / SEMINAR

契約コラム・セミナー

COLUMN / SEMINAR

民法改正

民法改正・譲渡制限特約付き債権の譲渡の効力が見直されました

2020.02.07

今回は、民法改正の「譲渡制限特約」について解説いたします。

契約書に「この契約から生じる債権は第三者への譲渡ができない」といった条項が付されることがあります。

このような、債権について譲渡を禁止したり制限する旨の債権者・債務者間の特約を「譲渡制限特約」といいます。

この「譲渡制限特約」が特に問題にされるのは、売掛債権の譲渡の場面です。

「譲渡制限特約」が重要な場面

まず、債務者にとっては、自分の関知しないところで自分が債務者となる債権の譲渡がされて誰が債権者であるのか分からなくなってしまうという事態を防ぎ、支払の相手方を固定し、支払の相手を誤るリスクを避けるという重要な機能を有しています。

一方、売掛債権を有する債権者としては、この特約があると、売掛債権を担保に入れて融資を受けたり、売掛債権を譲渡して、支払い期限より前に現金化するといった対応を取るといった手段が制限されてしまいます。

この譲渡制限特約については、民法改正前は、こういった特約が定められている場合には、債権の譲渡は無効であるとされていました。これによって、担保となる不動産等を持たない中小企業等が自社の債権を譲渡して(又は譲渡担保として)資金調達を行うことが困難となっていました。

改正民法においては、譲渡制限特約が付されていても譲渡の効力は妨げられない

改正民法においては、契約書などで、債権譲渡は禁止するという条項を入れていたとしても(つまり譲渡制限特約が付されていても)、債権(預貯金債権は除きます。)の譲渡の効力は妨げられないとしています。

もっとも、支払の相手方を固定したいという譲渡制限特約を付した債務者の期待も保護する必要があることから、譲渡制限特約の存在について悪意重過失(※)の譲受人に対しては、

  • ①債務者は、債務の履行を拒むことができ
  • また、
  • ②基本的には、譲渡人に対して支払えば免責されます

譲渡制限特約について悪意重過失の譲受人としては、譲渡人を介して(債務者が譲渡人に対して支払った金銭から)債権の回収を図ることが考えられます。

さらに、

  • ③譲渡制限特約が付された金銭債権が譲渡された場合 債務者はその金額を供託することができ、債務者が支払の相手方を誤るリスクを軽減する措置

が講じられています。

※法律上の「悪意重過失」とは、知っていること(=故意、これを法律上「悪意」といいます。)と、知らなかったことについて重大な過失がある場合、つまり、ちょっと気を付ければ分かっただろうといえるような場合を意味します。この場面では、譲渡制限特約が付されていることを知っているか、ちょっと注意すれば気が付ける状況であった場合ということになります。

つまり、債務者が、突然第三者から、「この売掛債権の譲渡を受けたので自分あてに払ってほしい」と言われた場合は、実際に債権譲渡がされたかを確認の上、

  • ①債権譲渡を認めてこの第三者に支払うか
  • ②悪意重過失であると主張して元の債権者に支払うか
  • ③供託するか

を選ぶことになります。

一方、債権の譲受人ですが、まず、悪意重過失がない場合には債務者から支払いを受けます。

悪意重過失であった場合でも、債権譲渡自体は有効ですので、何らかの手段で回収と認める必要がありますが、債務者からの支払いを拒まれる可能性がありますので、その利益を保護するため、

  • ④譲受人は、債務者が債務を履行しない場合には債務者に対し、相当の期間を定めて譲渡人へ債務の履行をするよう催告することができ、その期間内に履行がないときは、債務者は譲受人に対して債務を履行しなければなりません

これにより、譲受人は、以後は、直接債務者に対して支払を求めることになります。

また、

  • ⑤譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人は、債務者にその債権の全額に相当する金額を供託するよう請求することができ、この請求後は、債務者は譲渡人に支払をしても免責されません。

以上が、民法改正の「譲渡制限特約」についての重要な論点になります。


CONTACT US

契約書レビューを効率化しませんか?

契約書レビューAIを
無料で試す
契約書レビューAIの
デモを見る