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初めてでもわかる!契約書作成の方法・記載内容・ポイントを一から解説
2025.02.07
契約書作成は契約の効力発生のために必須ではありません。しかし、契約の存在や内容を証明しトラブルを未然に防ぐなどの目的のため、ビジネス上の取引では契約書を作成するのが通常です。なお、契約書を作成する際は、一般的な作成方法にのっとりポイントを押さえて作成した方が取引をより確実かつスムーズに進められます。
本記事では、契約書の一般的な作成方法と押さえるべきポイント、契約書に記載すべき事項などを具体的にわかりやすく解説していきます。
契約書の基礎知識
契約書を適切に作成するためには、まず、契約書について理解することが大切です。
契約書とは
契約書とは、契約の存在や内容を証明する書面のことをいいます。
契約を成立させるために契約書の作成は必ずしも必用ではありません。契約は、原則として以下の二つの要素のみで成立するためです。
1、契約を締結したいという申し込み
2、申し込みを受けた者によるその承諾
では、何のために契約書を作成するのでしょうか。次項で解説します。
契約書を作成すべき理由
【証拠を残すため】
契約という概念は目に見えません。そのため、契約の存在や内容について、後から相手方との間で認識の相違が生じてしまった場合に備え証拠を残しておく必要があります。契約書を作成していれば、契約の存在やその内容を後から確認することができトラブル防止に役立ちます。
【抜け漏れのない合意形成をするため】
口頭で契約をする場合、詳細な契約条件までを全て明確に合意することは困難です。一方、契約書を作成する場合はその過程で、詳細な契約条件までを抜け漏れなく確認・合意することができます。
【信用性を確保するため】
契約書を作成することによって、万が一裁判になった場合の信用性を確保することができます。裁判所は経験則に基づき、会社が重要な契約を締結する際には契約書を作成するはずだと判断するためです。
【契約を有効に成立させるため(一部の契約類型のみ)】
契約の成立に契約書の作成は必ずしも必用ではないと前述しましたが、それには一部例外があります。例えば、下記の契約は法律上、契約書を作成しなければ効力が発生しません。
・保証契約
・定期借地契約、事業用定期借地契約
・合意管轄
契約方法の種類
契約方法には下記の種類があります。
口頭契約など
前述の通り、当事者の申し込みと承諾があれば契約は成立します。そして、契約の申し込みと承諾は口頭で行うことも可能です。したがって、契約の締結は口頭でも行うことができます。電子メールやFAX、チャットなどのやり取りでも同様です。
書面による契約書
ビジネスでは、契約書を作成して契約を締結するのが一般的です。前述の通り契約書作成には下記のメリットがあり、口頭契約の場合よりもスムーズな取引が可能で、トラブルの防止や拡大回避にもつながるためです。
・契約の存在と内容について証拠を残すことができる
・抜け漏れのない合意形成ができる
・裁判所の信用性を確保できる
電子契約
電子契約とは、書面での契約書作成に代え、インターネット上で契約を締結することを指します。電子契約には書面による契約と同様のメリットがある上、契約書を郵送する手間やコストが省けるという利点もあります。
契約書作成は当事者のどちらがすべきか?
契約当事者のうちどちらが契約書を作成すべきか、法律上のルールはありません。ただし、次のような場合には自社側で契約書を作成することをお勧めします。
自社商品・自社サービスに関する契約書
自社商品・自社サービスに関しては、会社としての取引基準を作成し各案件で共有するため契約書ひな形を作成しておくことをお勧めします。ひな形は都度アップデートし、後から判明したリスクに対応する項目を追加するようにしましょう。
契約書に自社の意向を反映させたい場合
自社で契約書を作成すれば、自社の希望する条件を契約書に盛り込みやすくなります。相手方が作成した契約書に対し交渉して希望の条件を追加してもらうことも可能ですが、基本的には自社で契約書を作成する方がスムーズです。
契約書の一般的な書き方
契約書の書き方について、原則として法律上のルールはありません(一部例外あり)。ただし、契約当事者双方および第三者にとってわかりやすいものにするため、一般的な形式にのっとって作成する方がいいでしょう。以下、一般的な契約書の書き方を紹介します。
タイトル
タイトルがどのようなものであっても、契約を証明する書面は全て契約書となります。実際は、わかりやすさの観点から、「○○(契約の種類または合意事項)契約書」というタイトルを付けるのが一般的です。また、継続的な取引を前提とする契約書の場合、「取引基本契約書」または「○○(取引の種類)基本契約書」というタイトルを付けることもあります。
【例】
・売買契約書
・売買基本契約書
・業務委託契約書
・秘密保持契約書
前文
契約書の前文とは、タイトルの後、本文の前に記載される文章です。契約書の前文には、次の事項を明記します。
・契約の当事者
・契約の目的となる取引や合意事項など
・契約書内で用いる略語の定義
契約書では、読みやすさの観点から当事者を「甲」「乙」と定義するのが一般的です。または、取引上の立場に合わせて「売主」「買主」「発注者」「受注者」などと定義することもあります。
本文
契約書の本文には、契約の目的と具体的な条件を記載します。実際にどのような条項を設けるべきかはケースにより異なりますが、基本的に次の観点から検討します。
・前提となる事実関係
・契約の目的
・実際の取引の流れ
・発生する可能性のある事態とそれに対するリスクヘッジ
後文
契約書の各条項の後の部分に、後文として次の内容を記載します。
・契約書の原本を何通作成するか
・契約書の原本を誰が保管するか
・契約締結の意思表示は記名押印か、署名か
これらの情報が記載されていなくても契約の効力に影響はありません。ただし、万が一紛争が生じた場合に確認する必要が生じることがあるため、記載しておくのが一般的です。契約書の原本は通常、契約当事者の数だけ作成し、各当事者が一通ずつ保管します。
契約締結日
後文の後に、契約締結日を記載します。契約締結日は、実際に契約書を作成した日付とするのが原則です。ただ、取引の状況などに応じ、契約書作成日とは異なる日付を記載するケースもあります。別途契約の効力発生日について定めていなければ、契約の効力は契約締結日から発生するためです。
当事者双方の署名または記名・押印
契約書の末尾では、契約当事者が記名押印または署名をします。
契約当事者が会社の場合には、次の項目を記載します。
・会社の所在地
・会社名
・記名押印または署名する者の役職
・記名押印または署名する者の氏名
契約書作成のポイント6つ
契約書を作成する際にはその意義を十分に発揮するため、下記6つのポイントを押さえるようにしましょう。
契約書作成の目的を意識する
前述の通り、契約書の作成には証拠を残す、抜け漏れのない合意形成をするといった目的があります。これらの目的を意識し、契約書には以下の事項を明確に記載しましょう。
・自社および相手方の権利(契約上相手に何を主張できるか)
・自社および相手方の義務(契約上やらなければならないこと、やってはいけないこと)
・取引上生じ得るリスクとそのカバー方法
第三者に正確に伝わる表現をする
契約書を作成する際は、業界用語や独自の略語などを使わず、世間一般的に伝わる表現を用いるようにしましょう。また、複数の解釈ができる表現は避けましょう。そうでなければ下記のようなリスクが生じ、契約書作成の意義が損なわれてしまいます。
・契約内容について相手方との間で認識の齟齬が生じる
・万が一裁判になった場合に、裁判所がこちらの意図通り契約書を解釈してくれない
契約条件はできる限り具体的に記載する
契約条件のうち契約書に記載のないものや抽象的な記載しかされていないものは、以下のいずれかの扱いがなされます。
・民法・商法などの法律に従って解釈される
・当事者間で改めて協議する
前者の場合、自社の意図に沿わない条件で取引をすることになる可能性があります。後者の場合、取引がスムーズに進みません。こういった事態を避けるため、契約書には契約条件をできる限り具体的に記載するようにしましょう。
法律用語を正確に使う
契約の相手方や裁判所は、法律上の言葉の定義に従って契約書を読みます。そのため、契約書内で法律用語を使う際は事前にその定義をチェックし、自分の認識と齟齬がないか確認するようにしましょう。また、相手方や裁判所に伝わりやすくするため、法律用語があるものは一般用語ではなく法律用語で記載するようにしましょう。
関連する法令や判例をチェックする
法令や判例は、契約に次のような影響を与えます。
・契約書の種類によって、記載事項が法律で決まっているケースがある
・契約書に法令に違犯する条項を記載すると、契約そのものが無効となってしまう
・契約書に記載のない事柄については、原則として法令や判例に基づいて解釈される
このように、関連する法令や判例の確認が不十分だと、せっかく作成した契約書が意図通りの効力を発揮できない事態が生じ得ます。
契約書のひな形は自社向けにアレンジする
契約書のひな形はあくまでも一般論です。ひな形を使う際は、自社の実際の取引内容をよく検討し、以下の観点からアレンジするようにしましょう。
・自社にとって必用な条項が欠けていないか
・自社にとってかえってリスクとなる条項が含まれていないか
契約書を書面で作成する場合
本章では、契約書を書面で作成する場合の形式面について解説します。
収入印紙の添付
印紙税法という法律によって、一定の契約書については印紙税という税金を納付する義務があります。契約書が印紙税の対象となるかどうかは、契約書の種類と金額次第です。具体的には、下記国税庁の一覧表をご参照ください。
【参考】
印紙税は、国が発行する収入印紙を購入し、契約書に貼付して消印を行う方法で納税します。契約書に必用な収入印紙を貼っていないときには、本来納付すべき印紙税の額に加え、その2倍の過怠税が課せられます。貼付した収入印紙に消印がなかった場合も同様です。
押印の仕方
紙で契約書を作成する場合、主に次の場面で押印をします。押印する印鑑は実印でも認め印でも問題ありません。
・契約締結の記名押印
・契印
・割り印
・収入印紙の消印
契印とは、契約書が複数枚にわたる場合に、1つの文書であることを証明するものです。契約書のページにまたがって押します。契約書を袋とじした場合には、製本テープと契約書の紙の間にまたがって押します。
割り印は、複数の契約書が同じ内容であることを証明するためのものです。複数の作成した契約書全てに陰影が残るように押します。
消印は、収入印紙の再使用を防止するためのものです。収入印紙と契約書との間にまたがって押します。
契約書作成が難しい場合に取り得る方法
前述の通り、契約書の作成には関連する法令や判例の知識が必用です。そのため、法務専任でない担当者や法務経験の浅い担当者の中には負担が大きいと感じられる方もいらっしゃるようです。そのような場合、自社で一から契約書を作成する代わりに下記の手段が考えられます。
弁護士に契約書作成を依頼する
専門家である弁護士に依頼すれば、精度の高い契約書を作成してもらえます。一方、費用が高額になる、弁護士が自社の事情に詳しくないため打ち合わせに手間と時間がかかるなどのデメリットもあります。
ひな形を利用する
ひな形を利用すれば、契約書の一般的な条項は押さえることができます。ただし、インターネット上などで入手できるひな形は、必ずしも精度が高いものばかりとは言えません。ひな形を使用するのであれば、専門の弁護士が作成したことが保証されているものなど、信頼性の高いものを選びましょう。
契約書作成ツールを利用する
契約書作成ツールの中にはひな形集を備えているものがあります。特に、次のような特徴を備えているものであれば精度が高く信頼できるといえるでしょう。
・各契約類型専門の弁護士がひな形を監修している
・最新の法改正や判例変更に合わせ、ひな形を常にアップデートしている
まとめ
以上、契約書作成の方法とポイントを解説してきました。契約書作成のポイントを全てカバーするためには、精度の高いひな形を自社向けにアレンジして使用することをお勧めします。
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