法務サポートコラム

業務委託契約の書き方 ~その2~

2020年07月29日配信

「業務委託契約書」の第2回目です。(第1回目の記事はこちら
今回は「業務委託契約」のうち、【請負契約の場合の留意点】について解説します。

業務委託契約(請負型)で気を付けるべきポイントは?

前回記載させていただいた通り、請負型の業務委託契約では、受託者は、委託された業務について、請負人が、特定の成果物を完成させる義務を負います。

 

具体的には、建物の建築請負契約であれば、建物を完成させることとの対価として、請負代金を受領します。

 

システム開発契約でも、請負型の場合、単に見積もった工数の人員を投入するだけではなく、一定のシステムを完成までさせる義務を負います。

 

そのため、請負型の業務委託契約を作成する際、および、レビューする際に気を付けるべきポイントとしては、

  • ① 完成させなければならない委託業務(システムや建築物など)について、後の争いが生じないように詳細に疑義が生じないように規定すること
  • ② 委託業務が完成したかの確認方法について明確に定めること(検収について適切に定めること)
  • ③ 検収で不合格になった場合の対応方法について定めておくこと
  • ④ 検収で見つけられないような問題点があった場合、いつまでの期間どのように対応するか定めておくこと(従前の瑕疵担保責任、2020年4月の民法改正以降は契約不適合責任)
  • ⑤ 納期までに完成できなかった場合について、どのように対応するかを定めておくこと
  • ⑥ 完成前に契約が終了した場合に、未完成の成果物の取扱いについて定めておくこと
  • ⑦ 成果物についての権利の帰属を明確に定めておくこと
  • ⑦ 債務不履行(納期遅延、契約不適合があった場合など)の場合の損害賠償の範囲

といった点が挙げられます。

 

 

業務範囲を定める

まず、【① 完成させなければならない委託業務(システムや建築物など)について、後の争いが生じないように詳細に疑義が生じないように規定すること】ですが、例えばシステム開発契約では、この点で揉める例も多いですが、システム開発のプロセスは、大まかに企画・要件定義段階、開発段階、運用段階に分類されます。

 

個々の事例においては、例えば要件定義については既に委託者の方で確定させているため、基本契約の対象外ということもあり得るでしょうし、また、ソフトウェアの運用準備・移行までは委託業務に含まれず、ソフトウェアの開発(設計、プログラミング、テスト)までで業務終了という場合もあり得ます。それぞれのケースに合わせて、適切な業務の範囲を規定する必要があります。

 

なお、この①に関連する問題として、「仕様変更となって追加報酬が発生するのか」、「当初の業務の範囲内の作業なのか」もよく出てくる点です。この点も、結局、当初の業務範囲を明確にしておくことと、業務の範囲を超えた作業が発生した時点で、追加報酬について明確に定めることなく作業を進めるのではなく、まず、追加報酬について議論して定めておくことが重要となります。

 

 

検収方法を定める

次に【② 委託業務が完成したかの確認方法について明確に定めること(検収について適切に定めること)】ですが、ここも、「何をもって完成とするのか」、「どういった内容のテストを何回、誰がして、どのような結果を出せば検収合格とするのか」、が後々大問題になるようなケースもあります。

 

対象となる委託業務の種類等によって、検収の重要性やポイントは異なってきますので、同種のサービスなどの委託事例における検収の方法等を参考に、事前に慎重に定めておく必要があります。

 

 

検収不合格の場合の対応

【③ 検収で不合格になった場合の対応方法について定めておくこと】ですが、これは【② 委託業務が完成したかの確認方法について明確に定めること(検収について適切に定めること)】とセットで定められていることも多いです。

 

検収をやってみたところ結果が不合格となった場合に、対象業務によりますが、再度作り直すのか、不具合があったところを直すのか、直すにしてもやり方などは受託者側で決めてよいのか、委託者の方でやり方など指示できるのか、できていない箇所だけ返金(減額)対応するのか、などです。

 

「委託者の指示に従い不具合箇所を直さなければならない」とされている場合、いくら人員工数や費用がかかってもとにかく直すとなると、受託者として想定外の人員工数を割く必要が生じたり、費用がかかったりするリスクがあります。

 

一方委託者側として、性能が100%出ないと意味がないという場合には、性能90%の成果物を納入されて、10%の減額を受けたとしても、そもそもそのような成果物は全く意味がなく、いらないという場合もあり得ます。

 

そのため、検収の規定(上記②)と同様に、実際に検収不合格の場合に、どのような対応が可能か、どのような対応をしてもらう必要があるのかを慎重に検討して、事前に定めておく必要があります。

 

 

請負の契約不適合責任

【④ 検収で見つけられないような問題点があった場合、いつまでの期間どのように対応するか定めておくこと(従前の瑕疵担保責任、2020年4月の民法改正以降は契約不適合責任)】は、検収で見つからなかったような隠れた問題点があった場合に、いつまでの期間、どのような対応をするかを定めておくという点です。

 

ここも、③の場合と同様、不具合があったところを直すのか、直すにしてもやり方などは受託者側で決めてよいのか、委託者の方でやり方など指示できるのか、できていない箇所だけ返金(減額)対応するのか、などが問題になります。

 

③と同様に、実際に隠れた問題点が保証期間内に発覚した場合に、「どのような対応が可能か」、「どのような対応をしてもらう必要があるのか」を慎重に検討して、事前に定めておく必要があります。

 

なお、【保証期間(契約不適合責任を負う期間)】ですが、前回のコラムでも書きましたが、ここは、改正民法により変更があった個所になります。

 

改正前民法では、「注文者が請負人に対して担保責任を追及するためには、原則として目的物の引渡し等から1年以内、例外として建物等の建築請負では引渡しから5年以内、当該建物等が石造、金属造等の場合には引渡しから10年以内に権利行使をしなければならない」とされていました。

 

この点について、新民法では、「契約に適合しないことを知ってから1年以内(但し、引渡から10年以内)にその旨の通知をすれば、請負人の担保責任を追及することができる(ただし、注文者が引渡し時において目的物の不適合につき悪意・重過失の場合を除く。)」と変更されました。

 

例えば、システムに不具合があった場合など、これまでは、特に契約書に規定がなかった場合でも、引き渡しから1年間が担保期間であったのですが、今後は、10年以内に気が付いて連絡すれば、修正等を修正できることとなったのです。

 

但し、この、契約不適合責任を負う期間は、当事者間で別途の合意をすれば民法の適用はありませんので、それほど長く修繕義務を負いたくないという場合には、システム開発契約等で、別途の合意(1年以内に発見されたバグしか対応しませんと明記するなど)をしておくことが、受託者にとっては非常に重要です。

 

 

納期遅延の場合の責任

【⑤ 納期までに完成できなかった場合について、どのように対応するかを定めておくこと】の納期遅延ですが、納期を少しでも遅れた場合に無意味になるような特殊な事情がある場合には(例えば、クリスマスケーキをクリスマス当日までに納入する契約など。)、納期遅延で納入された場合に委託者側で一切の支払義務を負わないように、その場合には直ちに契約を解除可能で、解除された場合に委託者が一切の支払義務を負わない旨明記されている場合があります。

 

ただ、納期遅延した場合に、履行が無意味にまではならないものの、納期が遅延すると非常に大きな損害が生じることが予想される場合には(例えば、複雑なシステムのほんの一部だけを請け負っていたところ、当該一部だけが遅れ、予定されていたサービス提供が大幅に遅れた場合など。)、納期が遅れた場合について、1日当たりの違約金を定めておくような例もあります。

 

受託者としては、そのような規定が入ってしまった場合、遅延させないように努めたとしても、予定外の事態が生じ遅延が生じることはありえ、その場合、遅延日数が積みあがって、大きな金額の違約金の支払い義務を負う場合もあり得ます。

 

但し、納入遅延について違約金まで定めている例は多数ではなく、納入遅延が生じそうになった場合には速やかに委託者に連絡し、対応について協議することとし、更に、通常の損害賠償の範囲で、委託者が納入遅延について実際に生じた損害を立証した範囲で支払うというのが一般的な規定にはなっているようには思います。

 

 

途中終了の場合の成果物の取扱いと支払

【⑥ 完成前に契約が終了した場合に、未完成の成果物の取扱いについて定めておくこと】ですが、これは、何らかの理由で業務委託契約が途中終了した場合に、完成前のシステム等をどう扱うかの問題です。

 

受託者側で持っていても意味がない場合が多いため、一般的に、完成前であっても委託者に引き渡すこととしている例が多いようです。その場合の支払ですが、受託者としては、完成している割合に従って支払いを受けたいところです。使った分の人員工数や費用を取り戻すためです。

 

一方、委託者としては、完成前に引き渡しを受けると、これを別の業者に依頼するなどして完成させる必要があることになりますが、割合的に支払っても、残りの残額で、残作業を別業者に依頼することは難しい場合も多いようです。

 

そのため、委託者としては、完成前の引渡しにより利益を受けた範囲においてのみ支払うとする方が有利です。つまり、一から他の業者に依頼するよりも安くなった分のみを途中まで完成させた受託者に支払うという規定です。

 

最後に⑦、⑧ですが、これは、準委任の場合とも共通しますので、次回詳細に記載したいと思います。

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