COLUMN / SEMINAR
英文契約書
【弁護士監修】英文契約のリーガルチェックガイド|初心者向け実務ポイントを解説
2025.05.15
英文契約のリーガルチェックの重要性とこの記事の活用法
英文契約は和文契約と構造や表現が異なるため、内容を正しく理解・修正するには一定の専門知識が求められます。慣れていないと、リスク条項を見落としたり、整合性を欠いた契約になる可能性もあります。
本記事では、英文契約の基本構造やリスクの高い条項、チェック時の実務ポイントを解説します。さらに、AIを活用した契約書レビュー支援ツールの活用方法も紹介し、効率的かつ精度の高いレビューを支援する内容となっています。
これから英文契約に関わる方にも、実務で役立つ知識をわかりやすくお届けします。
※本記事は、Asiawise法律事務所 久保弁護士が登壇した当社主催セミナー「クロスボーダー英文契約の基礎~今さら聞けない、英文契約の疑問にお答えします~」における講演内容を基に当社にて編集・再構成したものです。(掲載にあたってはご本人の許諾を得ています。)
※本記事は初心者向けに基礎的な原則論を中心に簡潔に構成しており、例外や応用的な内容は割愛しています。
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英文契約の構造とリーガルチェックの基礎知識
英文契約は、和文契約と比較して構成や論理展開が異なる場合が多く、その作成・修正には慎重を要します。
本章では、英文契約における基本的な構造を整理し、各セクションの作成時に留意すべきポイントを解説します。整合性を保ちつつ、必要な情報を明確かつ効率的に伝えるための実務的なアプローチをご紹介します。
英文契約が持つ特徴と和文契約との違い
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英文契約は、和文契約と構成や論理展開が異なることがある
→ 注意点: 各条項の流れや「定義→義務→一般条項」の構造が明確な英文契約では、論理的な順序を崩すと整合性に欠ける契約になりやすいため、見出しと内容の整合性に注意して配置を行う必要があります。 -
「条項のタイトル」と「本文」が明確に分かれている
→ 対処法: タイトルは簡潔かつ内容を明確に示すものにします。(例:”Confidentiality” など)本文は可能な限り1つのトピックに絞り、複数の論点を混在させない点が重要です。和文契約でありがちな「前置き→結論→補足説明」という構成ではなく、「結論→前提条件」の順で記載すると読みやすくなります。 -
定型的な書き出し(Whereas句)なども見られる
→ 対処法: 背景説明を簡潔に記載することを意識します。冗長にならないよう、「なぜこの契約を締結するのか」に焦点を当てて2~3文程度に抑えると良いです。内容が契約条件と矛盾しないよう、全体の整合性も確認する必要があります。
英文契約の一般的な構成と作成時の注意点
英文契約の基本構造を理解することは、リスク管理の第一歩です。
ここでは、英文契約に一般的に見られるセクションと、その作成時に意識すべきポイントを整理しました。
以下に、それぞれの留意点を整理します。
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前文(Preamble)
内容: 当事者名、契約の背景など
留意点: 当事者名、契約の目的を簡潔に明記。英米法では約因の存在を意識する機能を持つ場合がある。 -
本文(Main Body)
内容: 当事者の主たる権利義務、定義条項、一般条項など
留意点: 始めに当事者の主な権利義務を書き出し、その後に肉付けすると良い。共通項をくくり出すと整理された契約となる。 -
一般条項(Boilerplate)
内容: 紛争解決、準拠法、完全合意など
留意点: 共通の基盤を明確化する役割がある。内容次第では解釈の違いが紛争に発展するリスクがあるため、慎重な確認が必要となる。 -
後文・署名欄(Signature Block)
内容: 署名欄や別紙など
留意点: 契約書への署名は本人の締結の意思が示されていれば問題ない(日本語でも効力に影響はない)。
英文契約のリーガルチェックで注意すべきリスクとは?
英文契約には、特に注意が必要なリスクの高い条項がいくつか存在します。
ここでは、紛争や損害発生時に大きな影響を及ぼす代表的な条項と、そのチェックポイントを整理しました。契約締結前にしっかり確認しておくことが重要です。
英文契約で特に注意が必要なリスク条項例
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補償(Indemnity)
内容:損害補償に関する条項。
チェックポイント:「損害賠償」とは別に設けられることがある。契約違反等の場合に効果が生じる、金銭賠償の合意(契約)。 -
準拠法(Governing Law)
内容:契約の解釈や履行に適用される法律を定める条項。契約書に明記された事項のみならず、明示的な合意がない部分についても、この準拠法に従って判断される。
チェックポイント:選定する法域の法律の特徴・前例(判例)の蓄積状況を確認する。
実務上不慣れな国や制度が未成熟な地域を準拠法とすることは、予期せぬリスクや執行面での困難を生じさせる可能性があるため、慎重な判断が必要。
また、準拠法の選定は、紛争解決条項や契約全体の整合性にも影響するため、他条項との一貫性にも留意する。 -
紛争解決手段(Dispute Resolution)
内容:契約に関する紛争が生じた場合に、どの手段(裁判or仲裁)を用いて、どこの機関・国・地域で解決するかを定める条項。
チェックポイント:紛争の解決手段として裁判or仲裁を選択し、その管轄(国・地域)も明確に記載する。
仲裁は国際的な執行がしやすい一方で、費用や手続が複雑かつ高額になる可能性があるため、契約金額やリスクの重要度に応じて判断する。
また、相手方の裁判所を指定する場合には、その裁判所の判決が自国内で執行可能かどうかを事前に確認する必要がある。 -
契約言語(Language)
内容:複数言語で契約書を作成する場合、どの言語が正文(法的拘束力を持つもの)かを定める。
チェックポイント:どの言語が正文かを必ず明記する。
言語間で意味がずれる可能性があるため、優先言語の指定が重要となる。
英文契約書作成時に気をつけるポイント
リスクが大きい条項の交渉
作成者としては、契約を結ぶ前にこれらの条項が一方的に不利にならないよう交渉の余地を残すことを検討する必要があります。例えば、責任の上限額を具体的に定めておき、その上限額に同意できる範囲で交渉を進めることが望ましいです。
文化や法域の違いを反映させる
英文契約の場合、文化や法域による違いが影響することがあります。例えば、米国や英国法の影響を受ける場合、日本企業にとって不利な解釈がされることがあるため、事前にその国の法律について調査を行い、準拠法や紛争解決条項においても必ず自社にとって有利な条件を反映させるよう意識します。
英文契約における重要条項とチェックポイントまとめ
英文契約において特に注意すべきは、損害補償や準拠法、紛争解決手段などのリスクの高い条項です。これらの条項は、契約後のトラブルに直結する可能性があるため、事前に十分な確認と交渉が求められます。また、文化や法域の違いを意識した契約書作成も重要なポイントです。適切な準拠法や紛争解決手段を定めることで、自社に有利な契約を結ぶことが可能となります。
次は、英文契約のチェック時に役立つ実務的な注意点やポイントを解説します。
英文契約のリーガルチェックにおける実務上の注意点と対策
英文契約のチェックには、和文契約とは異なる視点や注意が求められます。
特に英文契約の取り扱いにまだ十分慣れていない場合、言語表現や法律用語の違いから、見落としや誤解が生じやすいです。ここでは、実務上よくある課題と、英文契約をチェックする際に意識したい具体的なポイントを紹介します。
英文契約のリーガルチェックで起こりやすい実務上の課題
- 和文契約の感覚で読むと読み飛ばしてしまう条項がある
- 慣れない法律用語・言い回しで意味を取り違える
- 作成した英文契約の内容が適切かどうかわからない
実務担当者が押さえるべき英文契約リーガルチェックの留意点
- 英文契約特有の論点(言語、準拠法、紛争解決条項等)を意識する必要がある
- 英文特有の長文などを正確に読み解く必要がある
- 条件節(if、provided that等)を除いて要点(SVO)を理解し、その上で全体の論理構成を理解する
- shall, can, may, will など似た意味を持つ英語の使い分け
- 義務を表す“shall”、権利の“may”、可能性の“can”、未来の“will”など、それぞれの意味を理解する
- 初心者の場合、義務を示す“shall”と、権利を示す“may”だけを使うことを推奨
- 英文契約のレビューには一定の経験が求められるため、特に重要な条項については経験者の確認を得ることが望ましい
- 基本的な構造やリスクポイントを理解することで初期チェックは自力でも対応可能だが、AIツールやチェックリストも活用しながら、必要に応じて専門家と連携するのがより効果的
英文契約チェック実務におけるポイントまとめ
英文契約は、和文契約とは異なる言語的・法的な特徴があり、特に初心者は見落としや誤解を招くことがあります。本章で紹介したように、条項の理解や法律用語の使い分けに注意が必要です。特に「shall」や「may」のような用語の意味を正しく把握し、文章全体の構造を理解することが重要です。
その上で、経験者の助言を得ることや、AIツールの活用が有効な手段となり得ます。次章では、AIが契約チェックをどのようにサポートし、法務業務を効率化できるかを探ります。
英文契約のリーガルチェック・レビュー業務を効率化するには?
英文契約のレビュー業務は、専門性が高く時間もかかるため、法務部門の大きな負担となることがあります。
人材の限られた組織では、属人化やチェック体制の構築が課題となることも少なくありません。ここでは、こうした課題を踏まえたうえで、業務効率化につながる具体的な工夫や取り組みをご紹介します。
英文契約レビューにおける業務課題
- 経験不足:英文契約ができる人材がいない
- 属人化:特定の担当者しか読めない・判断できない
- 時間がかかる:複雑な契約書では1件あたり1〜2時間を要することも
- ダブルチェック体制が構築しにくい(人手不足)
英文契約のリーガルチェック業務を効率化するための具体策
- チェックリスト・定型条項集の整備
- 過去の契約を参考にテンプレート化
- 読み方や注意点をナレッジ共有する仕組みづくり
- AIを使って一次チェックを機械的に行うことで、全体工数を削減
AIによる英文契約リーガルチェックの最新動向と活用法
ここまでは、英文契約レビュー業務の効率化に向けた課題と取り組みの方向性について紹介しました。
こうした中で、近年注目されているのが、AIを活用した契約書レビューの仕組みです。
ここでは、実際に弊社が提供するAI契約書レビュー支援ツール「リチェック」を導入することで、どのような課題が解決できるのかを具体的にご紹介します。
AI契約書レビューツール「リチェック」で英文契約チェックが変わる理由
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英文契約ができる人材がいない
→ リチェックによる解決方法:契約書をAIが自動解析し、リスクや重要条項を明確化。英文ネイティブの弁護士による監修コメントや条文例が付いており、専門知識がなくても安心してレビューを進められます。 -
レビューに時間がかかる
→ リチェックによる解決方法:全文の解析とポイント抽出を自動化。さらに、契約書の英文と和文の切り替えもワンクリックで可能なため、翻訳作業の手間を省き、スピーディに内容を把握できます。 -
リスクや不整合点の見逃し
→ リチェックによる解決方法:紛争解決条項や補償条項など、見落としがちな高リスク条項をAIが自動で検出。ネイティブ弁護士監修の注意点も併記されており、チェック精度のばらつきを防ぎます。 -
チェック漏れや精度の低下
→ リチェックによる解決方法:複雑で長文な英文契約でも、AIが全体を網羅的に解析し、見落としを防止。属人的なレビューから脱却し、誰が見ても一定の水準を担保できる仕組みを実現します。
AIによる英文契約リーガルチェックの効果まとめ
リチェックは、「英語に強い人材がいない」「翻訳に時間がかかる」「レビューが進まない」といった英文契約特有の課題に対し、AIと英文ネイティブ弁護士による監修で解決を図ります。翻訳はワンクリックで切り替え可能で、経験や語学力に依存せず、高品質なレビューが可能です。
結果として、契約レビューの質とスピードを両立させ、法務業務全体の効率化と標準化を推進します。
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- 「英文契約のレビューを任せられる担当者が社内にいない」
- 「ネイティブでないため、リスクの見落としが不安」
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