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英文契約書

英文契約書の準拠法はどこにしておくべきか

2020.05.15

英文契約書の読み方 ~その4~ 準拠法について

今回も、英文契約書特有の条項についてです。第4回目は、「準拠法」についてです。

「準拠法」とは?

  「準拠法」とは、当事者間で言い分が食い違ったときや、契約の内容が契約書だけでは解釈できないときに、「解釈の基準となる法律」のことを言います。 日本法を準拠法とした場合には、契約書の規定を見るだけでははっきりしない内容がある場合には、日本の民法や商法等の法律に基づいて判断がなされることになります。   具体的文言としては、日本法の場合、「本契約及び本契約に起因または関連して生じる請求は、日本法に準拠し解釈される。(This Agreement and all claims arising out of or in connection with this Agreement shall be governed by and construed in accordance with the substantive laws of Japan.)」というように規定されます。

具体的な事例

具体的事例としては、例えば、日本の企業とアメリカ、ニューヨーク州の企業間で取引を行っている中で、納期遅延が発生したとします。そのような場合に、納入を期限までに受けられなかった買主がどの範囲で損害賠償を請求できるかが契約書の規定だけでは判断できない場合があり得ます。その際には、準拠法に基づいて判断することとなります。 なお、そういった損害賠償の範囲について、それぞれの国、州の法律等に規定がありますが、その範囲は異なります。そのため、損害はどの範囲で賠償しなければならないかという法的問題点について、どの法律に準拠するかによって結論が異なってくる場合があります。  

管轄と揃えた方が良いか?

この準拠法についてよくご質問いただくのは、「管轄と揃えた方が良いか?」という点です。つまり、東京地方裁判所を専属管轄裁判所とするのであれば、日本の裁判所なのだから、準拠法も日本法にしなければならないのではないか。逆に、シンガポールの裁判所に管轄があるとした場合、シンガポール法を準拠法にしなければならないのかという点です。   これは、必ずしも一致させなければならないというものではなく、実際に、準拠法は香港法だが、訴訟自体は、東京地裁に係属しているというような事件もあります。その場合には、香港法に基づく解釈について、香港の弁護士を雇い、意見書などを書いてもらって、日本の裁判所に提出し、それに基づいて日本の裁判所が香港法に準拠した判断を下すこととなります。ただ、上記の通り、準拠法の国の弁護士などを雇い、意見書を取得するなどしなければならないため、手間も費用もかかるということにはなります。  

準拠法は日本法にしておく方が有利か?

また、「準拠法はやはり日本法にしておくのが有利ですか?」というのもよく聞かれる質問です。 上記のとおり、日本の裁判所で訴訟をするのであれば、日本法にしておく方が手間も費用も節約できます。また、日本の企業としては、何か海外企業とのもめ事が起こった際でも、取引契約が日本法準拠であれば、自社の顧問弁護士に聞けば、概ね、自社の権利や賠償義務等の範囲について把握できることとなるので、この点でも簡便かもしれません。   但し、法的論点によっては、外国法よりも日本法の方が厳しい立場を取っているものもありますし、様々な請求の要件も、国ごとに異なりますので、一概には日本法が有利とは言い切れないかもしれません。 なお、一番避けた方が良いのは、発展途上国の法律に準拠するという規定です。というのも、発展途上国の場合、法律が十分に整備されていなかったり、裁判例の蓄積が不十分な場合もあり、その場合、現地の弁護士に聞いても結論が出ない(明記した法令も過去の類似の裁判例もないため、訴訟してみないとわからない)といった事態もあり得るためです。   一方、NY州法やシンガポール法、英国法などは、類似の裁判例も豊富で、そういった事態は避けられます。訴訟をしてみなくても、現地の弁護士に意見をもらうことで、概ねの自社の法的権利や義務が分かり、それに基づいて相手方と交渉することができるのです。そのため、日本法以外を選択する場合には、そういった先例が豊富な国の法律を選択した方が無難です。

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